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退屈な日々にさようならをのmのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
4.8
‪2016年の11月イベント公開時と、2017年2月の山下監督トークの日の二度鑑賞。‬

‪最初にプロットを聞いた時に抱いた「この映画はどんな映画になるんだろう?」という疑問が本編を観ている間もずっと頭にあって、けれどもそれで詰まらないとか駄目とかでは全然なく、カテゴライズできない感覚を抱いたまま長尺を全く飽きずに面白く観れた。‬
そのカテゴライズできない感覚こそがこの映画の美点なのだと思う。上手く言葉にできないけど魅力的な、不思議な映画だった。

俳優陣は皆適材適所で個性を活かされていて、心に残る役者さんが数多くいた。中でも青葉役の松本まりかさんは力強く、彼女が死にゆく恋人をじっと見詰める横顔のショットには息を呑み心奪われた。

梶原(矢作優さん)と多田(村田唯さん)カップルの東京パートが本題の福島パートに対してどういう意味を持つのかという事に、中盤で遅ればせながらようやくその意味に気付いて腑に落ちた。

矢作さんがこの不思議な映画の中に観客を誘う役割で(素晴らしい導入役だった)、村田唯は還るべき日常の象徴だったのかな、と勝手に思う。
そういう意味で青葉や貴美子(安田茉央さん)達が失ってしまったものを、まだ失わずに繋ぎ止める事ができる希望みたいなものが東京編の主役カップルに託されているのだなと勝手に解釈して腑に落ちたのだった。

人はある日突然死ぬし、周りの大切な誰かを突然失う、それは避ける事ができない。けれども失う前にそれを大切にする事はできるのかもしれない、という事が込められている映画なのかも、とようやくなんとなく言葉にする事ができてきたのだった。
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