りっく

退屈な日々にさようならをのりっくのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
3.9
今泉力哉はホンサンスやウディアレンのような恋愛のめんどくささを、奇妙なキャラクターとセリフで紡ぐことができる映画作家だ。だが、本作はさらに一歩踏み込んだテーマを突き付けている。

愛していた人を失ってしまう様を見届けてしまった女と、ずっとどこかで生きているだろう彼を想い続けていた女を中心に、取り残されてしまった心の空洞と愛の残骸を、まるでショベルカーで拾い上げて埋めるかのように、そっと寄り添う今泉力哉ならではの優しさがある。

もちろん今泉力哉ならではのユーモアは満載で、特に彼女から別れ話を切り出されたプライドの高い映画監督をかじる青年は画面に出てきただけで思わず頬が緩む。特にPVの監督としてアイドルに飛んだり跳ねたりすることをマネージャーと言い争う場面は最高!

その他にも部屋に女の子がたくさん座っている場面や、双子の兄との思い出の場所である公園で水風船をキャッチボールする場面、彼女が残すパンの耳を食べる場面などなど、思わず愛おしくなる場面が満載。

人が死んだという事実を知らなければ、その人はきっとどこかで生きているんだろうなぁという想像ができる。死ぬことを認めて受け入れること。最終的には死体遺棄で自首するであろう彼女と、警察官の格好を崩さない元カノとのやり取りこそが本作のクライマックスであり、ここで作品を終わらせても良かった印象を受けた。
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