垂直落下式サミング

ヘッド・ショットの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ヘッド・ショット(2016年製作の映画)
4.2
『ボーンアイディンティティー』『ロングキスグッドナイト』など、記憶喪失ものはサスペンスアクションの花型だ。主演イコ・ウワイスは童顔なんだか老けてるんだかわならない顔をしているので、過去のない虚ろな男としての設定に説得力があり、ストーリーの違和感はなかったと思う。
さらに、記憶をなくした主人公をなにかと構ってくれる相手役はこれまた可愛らしいメガネ女子であり、こんな子が物騒な目に遭う様子を見せられればハラハラせずにいられないだろう。
多くのチンピラを事も無げにジェノサイドしていく主人公に差し向けられる様々な特殊技能を身に付けた刺客が段階的に強くなっていく快感も、武術アクションの醍醐味。ラスボスが狼牙風風拳とか六王銃っぽい技を繰り出すのにも注目だ。
殺伐とした世界観で、組織暴力の温床になっている裏社会の暗部を描いた血みどろの激しいアクション映画でありながら、さっきまで恐い人に脅されて泣いてた男が病院では俺が一番強いんだぞと医者や警備員に不遜に振る舞う様子や、大量殺戮が行われた現場にボロい原付で駆け付けるなど、バッキバキの過剰な暴力性のなかに北野武や三池崇史のようなユーモアが混在していて親しみやすい。
牛殺しでお馴染み後藤洋央紀選手が特別出演しているが、急に出て来てアクションだけみせて出番終了なので、敵の助っ人用心棒としてストーリーに絡ませてあげてほしかった。『ザ・レイド2』も日本勢はちょい役だったもんな。本業のスケジュール的な問題なのかもしれない。