順慶

残像の順慶のレビュー・感想・評価

残像(2016年製作の映画)
4.0
映画で近代史を学ぶことは多い。
最近見た「ハクソーリッジ」とほぼ同時代(沖縄戦1945年)、ポーランドではソ連のスターリン主義が浸透(ポーランド統一労働党が結成1948年)する。
監督アンジェイ・ワイダは、この時22歳。美術大学に通う学生だった。ワイダがこの題材を映画にすることは必然だったと思う。そして昨年90歳で亡くなった。この作品が遺作となった。遅すぎた傑作だと思う。

映画「残像」はポーランドの画家ストゥシェミンスキの晩年を描いている。
第一次大戦で片手片脚を失い、松葉杖で教壇に立ち美術を教えている。時には草原の丘を学生といっしょにゴロゴロ転がる。オープニングシーンであるが、爽やかで明るいシーンはこれが最後だ。

そして少しずつ社会主義が押し寄せてくる。
従わないストゥシェミンスキは迫害される。
教師という職を失っても、芸術を残そうとするストゥシェミンスキとその教え子たち。

小さいのにしっかりしているひとり娘。家を出る彼女の涙が印象的だ。母親の葬式の時のコート、そして父親に靴を見せるエピソードもぐっとくる。

みじめなストゥシェミンスキの最後は切なすぎた。
順慶

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