CHEBUNBUN

ポップスターのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ポップスター(2018年製作の映画)
3.0
【スタア誕生譚へのアンチテーゼ】
第75回ヴェネツィア国際映画祭で公開されるや賛否両論分かれたナタリー・ポートマン主演のスタア誕生物語『VOX LUX ヴォックス・ルクス』を観ました。『メランコリア』、『EDEN/エデン』等に出演したブラディ・コーベットが『シークレット・オブ・モンスター』に引き続き、独特な世界観を創り上げたとのことで観てみたのですが、これがとってもビザールな作品でした。

本作は、明らかにブラディ・コーベットが出演した『アクトレス〜女たちの舞台〜』を参考にした作品だ。『アクトレス〜女たちの舞台〜』は大御所の女優が、かつて自分をスターに押し上げた作品のリメイクに出演することになり、共演する若い女優にかつての自分を重ね合わせていく話だ。なんと骨格は一緒でした。本作は1999年のスタア街道を駆け上る歌手のサクセスストーリーと2017年子どもを持ちツアーを通じて自分の人生を総括しようとするその歌手を描く作品となっています。

そして、賛否が分かれるのも納得、この作品はアメリカ的スタア誕生譚のアンチテーゼになっている作品でありました。冒頭、コロンバイン高校銃乱射事件を彷彿させる銃撃事件が繰り広げられる(実際にこの事件は1999年に起きている)。地獄から幸運にも生き延びた少女セレステは追悼式で魂の歌を披露する。その歌があまりにも素晴らしく、ジュード・ロウ演じるマネージャーの手によってプロデュースされていく。そして彼女は、トラウマを癒すように奇抜なファッション、ド派手なMVに出演することでスターになっていくのだ。そして幸福の絶頂になり突然映画は2017年にシフトする。スタア街道は朽ちた道のように見える。スキャンダルにスランプにと伸び悩んでいるセレステが映し出される。彼女は娘と共にカムバックツアーを行おうとしている。トラウマから目を背けるようにスタア街道を突っ走ってきた彼女は、娘のスタア街道、そして耳にする新たな銃撃事件のニュースを聞いて人生を省みるのだ。

アメリカ人にとってはたまったもんじゃないだろう。スタア街道を駆け上がるトリガーが、銃乱射事件の追悼歌ということに。そしてimdbの微妙な評価っぷりは『ビリー・リンの永遠の一日』を思わせる。あちらも英雄になった兵士がスーパーボウルの試合で持て囃される中に感じる孤独とトラウマのフラッシュバックが描かれている。アン・リーの目からみた行きすぎたアメリカン・ドリームに感じる感動ポルノ的要素批判が紡がれていた。この鋭い批判は、普通のサクセスストーリーを観たい人にとっては胸糞が悪いものに見えてしまうだろう。

ただ、ブラディ・コーベットの前作『シークレット・オブ・モンスター』と比べると若干物語のキレに弱い部分があったのは確か。1999年と2017年の間にある断絶の重みというのが感じられず、またクライマックスに内なるモヤモヤを解き放つがごとくライブシーンが挿入されるのだが、これが2時間駆け抜けてきた彼女の人生を総括する華に見えなかったのがかなりマイナスに働いてしまったと感じた。