ねぎおSTOPWAR

オリエント急行殺人事件のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
4.2
良かったと思います。

有名な原作、リメイク、結構なハードルの中、製作に挑んだ価値は十分にあったと思います。オチを知る人知らない人、見応えはあると思いますよ。

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以下は本筋に触れますので、既にご覧になった方のみ読んでいただければ幸いです。あしからず。

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いきなり今話題のエルサレム!
最初のショットでいきなり観る気をそそられました。場所を理解させる風景ショット・・・カメラはPANしたかと思ったら真下を向いて嘆きの壁(のセットでしょう)。おもろいことするなあと思っていたら少年がこちらに走ってくるのを迎えながら横ドリーで階段を駆け上がる。
ゆで卵の高さが揃わないことに納得しないエルキュールポワロ。依頼された事件の解決に向かう際、道路に落ちていた動物の糞を踏んでしまう!そしてバランスをよくするためと、もう片方の足でもわざわざ踏む!
笑いを取るシーンのようで、実はオチに向けて着々と重ねられる伏線です。セリフにおいても「善と悪が・・」とグレーな決着をことさら嫌う人であることを刷り込むわけですよね。

撮影はかなり凝っていたように思います。
「カット割過ぎ!TVみたいじゃん」と思う一方、オリエント急行に乗り込むショットは相当な長回し。車窓と車窓の間がストレスになりそうなくらいずーっとカメラが横移動。これまた面白かったです。
そして列車が走る遠景はCGなのでしょうがかなり美しい。幾度となく様々な景色が映し出されますが、かなりお金と労力をかけたと思います。車内の狭い絵とのバランスが良かったですよね。

一番印象に残ったショットは死体発見のシーン。客室の廊下の俯瞰ショットです。ポワロたちがやってきて、ノックに返答がなく、ドアは開かず、ポワロがドアノブを壊し、ノブが下に転がり、ロックを壊し・・という一連の動きを、ショットを割ることなく、ワンカットで説明しちゃいました。ヒッチコック監督の「サイコ」で刑事が殺害されるシーンから始まり、スコセッシ監督も度々使う俯瞰ショットですが、これは両監督も拍手ではないでしょうか。隣の客室に移動するところまでカメラは追いかけます。
思えばこの俯瞰が多用されています。

また、ラストポワロの推理場面です。多くの方も指摘するように、あれ「最後の晩餐」ですよね。十二使徒ですし。このあたりは1974バージョンと大きく作り変えてきましたね!(1974では「12人12人」と度々強調されていましたが・・)食堂車ではなく、寒く危険な場所が背景です。また襲われたあとなので髪が乱れています。のっけから積み上げられたポワロのクールさ、緻密で完璧なイメージが壊れていく象徴でしょうかね。それまでになく口調も興奮していきます。さらに大オチの部分はさらっとしたカッコよさが表現された1974verに対して、情熱的なシーンに仕上げてきました。弾をこめていない銃を託す。誰も死ぬことはありませんが、ポワロを撃つかどうか試し、彼女は自分のあごで引き金を引きました・・。

このあたりはどうも腑に落ちない方もいらっしゃるでしょうね。私も好みで言えば1974verです。

実は今回、Filmarksの検索機能で知りましたが、私、ケネスブラナーほぼ初体験でした。ハリポタくらい。道理で名前は知っていても顔がうかばないわけです。