半兵衛

台北ストーリーの半兵衛のレビュー・感想・評価

台北ストーリー(1985年製作の映画)
4.0
長い間付き合っているカップルの、何てことない日常や生活の中から独特な長回し映像によって現代人のなかにある停滞感を引き出すエドワード・ヤン監督の演出が鮮烈で美しくして最期まで見入ってしまった。

部屋の小洒落たセンスや、映画のポスターの使い方に監督の美学が感じ取れる。主人公の部屋に貼ってあるマリリン・モンローのポスターが目立つが、さりげなく石原裕次郎がワンシーン登場しているのが日本人としては気になる。

主人公のカップル二人ともプロの俳優ではないのでぎこちないが、エドワード・ヤン監督の独特の空気にはよくはまっている。そしてホウ・シャオシェンののっぺりとした風貌が家族や友人関係に苦労するキャラクター像に似合っている。

終盤のある登場人物の顛末を描いた演出は公開当時はショッキングだったのだろうけど、40年近くたった今となっては多少の古さは否めなかった。ただそれは後進の作家たちが引用しまくった結果なのでしょうがないし、映像の輝きの強度はしっかりと保たれていた。

ヒロインがサングラスを常に掛けていたり、ラストすべてを無にしてしまうような終わらせ方は『無謀な瞬間』を彷彿とさせた。
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