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サーミの血のmeltdownkoのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
4.0
この映画はスカンジナビア半島の先住民族であるサーミ人に対するスウェーデン人の差別を描いているが、まず目を引くのが当事者であるエレ・マリャ自身が名誉スウェーデン人的な言動をとっているところであろう。彼女は、私はサーミ人とは関係ないと言い放ち、あの人たちはものを奪うし嘘をつく、などとサーミ人を悪しざまに言うのである。通常であれば差別を題材とする映画においてこのようなキャラクターが主人公となるのは考えにくいが、この映画は差別を中心に据えながらもマイノリティが権利や自由を勝ち取るものではなく、あくまでもエレ・マリャの個としての戦いにフォーカスしたものであることが明らかになってくる。それでは彼女はなぜサーミ人を憎み、悪態をついたのか。それは彼女がサーミ人について言った言葉の中に手がかりがあるように思う。映画の中で「ものを奪い」「嘘をついた」のはいったい誰であったのか。それを思い起こしてみれば、彼女のサーミ人に対する罪悪感がサーミ人への嫌悪感へとすり替わっていると見ることもできるだろう。彼女が自分の人生を回想することで自ら蓋をしていた感情に気付いたために、頑なであった態度を軟化させ、最後の謝罪の言葉に至ったのではないか、と私は思うのである。
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