砂

立ち去った女の砂のレビュー・感想・評価

立ち去った女(2016年製作の映画)
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長大な上映時間、白黒の長回しで知られるラヴ・ディアス。
本作も3時間48分と長く、しかも淡々と固定カメラの長回しであるのだが、そこまで長さは感じなかった。むしろ映画の構成上、この長さがちょうどいいと感じたくらいだ。

冒頭で読み上げる話が本作そのものを物語っており、閉じた思考の中での緩やかな円環構造となっている。コントラストの強い映像同様、富と貧困、罪悪感と赦し、などのいわば光と闇という二項対立によってゆっくりと登場人物たちの心情が映像を持って語られる。
必要以上の説明はないし、重要なシーンであるロドリゴ殺害シーンすら劇中では事後のこととしてボケたピントで現場付近が写されるが、時折挿入される誘拐のニュース、退廃した貧民街など全編を通してどこか暴力の影のようなものが付きまとっている。

まるで聖母のごとき施しと優しさを弱者に示し、自身も赦しをえていくホラシアだが、その間も復讐の機をうかがったり時に暴力性を発揮するなど、二項対立では簡単に割り切れない人の奥行きが浮かび上がる。
これらが円環としてじっくりと自然な感じであらわれるためには4時間という時間も適切であるように思えた。一か所、手持ちカメラになった辺りは唐突なカットで疑問があったが、あれはどういう意図なのだろう…?

フィリピンという国ながら、主題が罪と赦しであることや映像から温度感と色をそぎ落としているためなのか、どこか西洋的とも東洋ともとれる、不思議な無国籍感が漂っている。
尺もあって細かなところは書ききれないが、また新作など出たら観ようと思う(確実に長尺であるだろうけど)
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