こーの

空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎のこーののレビュー・感想・評価

3.9
歴史物かと勝手に思っていたら中華系ファンタジーだった。
自分は夢枕獏もチェン・カイコー監督も中国映画も好きなので結果的に楽しめたが、そうでない人にとっては地雷になり兼ねない。
邦題と宣伝のやり方があまりにも罪深い。

原題は『妖猫伝』。
留学のために唐へ渡り、密教の教えを請うべく青龍寺を訪れるものの、門戸を開いてもらえずくすぶっていた空海。偶然立ち会った皇帝の死に疑念を抱き、妖猫の存在を暴き出す。やがて書記官として宮廷に仕えていた白楽天とともに、楊貴妃の死をめぐる奇妙な謎に巻き込まれてゆく…。
というのがおおよその粗筋。
歴史ドラマというより史実に基づく歴史ミステリーであり、楊貴妃の死に関する歴史の『もしも』を描いた作品である。
幻術師が仇であり、空海が法術師として妖猫と相対するような場面もあるので、ファンタジーの要素が強い。

元々中国市場をターゲットにしている作品なので、空海の修行や苦労などよりも中国史の謎にターゲットを絞っている。
また楊貴妃、李白、白居易あたりは知っている前提の内容になっている。

こういった作品の性質を考えれば今回の宣伝が適切でないことは明らかだと思うのだが…。

6年がかりで作り上げたというセットは壮大で唐代の衣装は美しい。アジア系ファンタジーが好きな人には見所が満載だと思う。
原作と変わってはいるが、空海と白楽天のコンビも良かったし、妖猫を中心としたストーリーも良かった。
異国の血を引くという設定の楊貴妃をはじめ、女優陣がとても美しい。楊貴妃はまさに傾国の美女そのもの。
ただ長大な物語を2時間強に詰め込んでいるので、場面転換が多く時間の切り替わりが分かりづらいシーンもある。
この内容なら前後編で見たかったと思う。

また折角全編中国語(日本人同士の会話は日本語)で撮影しているので、音声中国語・日本語字幕で見たかったのでその点も残念だった。
吹き替えのセリフが時折おかしい時もあり、プロの翻訳家に字幕を書いてもらったほうが良かったのではないかと思う。