言わずとしれた山本周五郎の名作『さぶ』の映画化。
『無頼無法の徒 さぶ』というタイトルだが、「さぶ」は吃りで愚鈍な青年で、無頼無法の徒ではない。そのまま『さぶ』で良かった。
英二(小林旭)は仕事も出来て二枚目で、さぶに憧れられ頼られる存在だが、やはりさぶの心の奥底には妬みや憎しみが潜んでいたのだ。
好青年風の英二も、盗人の濡れ衣を着せられてからは荒くれ者のようになってしまう。自分に罪を着せたのがさぶだと言われればやむを得ないか…。
石川島人足場での描写もなかなか…田中邦衛や小松方正などの役者が生きている。
放免になってからは、さぶの成長ぶりが表現されている。
長門裕之の演技力はさすがだ。小林旭のやや一本調子の演技をカバーしている。
妻夫木聡(さぶ)と藤原竜也(英二)の『さぶ』も見たが、さぶは長門裕之にかなわない。しかし、ラストシーンは新しい方が感動的だった気がする。