りんコ

THE BATMAN-ザ・バットマンーのりんコのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

新たな実写映画のバットマンとして、クオリティが高かったと思う。

若いバットマン:今回はあらゆる意味で若いバットマンの話だが、その若いブルース・ウェインとロバート・パティンソンの相性が想像以上によかった。表の顔と裏の顔を使い分ける強かなブルース/バットマンではなく、まだどちらの顔でもトラウマや苦悩との向き合い方を確立していないドン底近くのブルースといった感じ。そんなブルース(とその成長)自身が、この映画一番の見所だと思った。

アルフレッド:クスリとも笑わないブルースを支えるアルフレッドは出番こそ少なめだったが、ブルースにもまだ家族がいる、守るものがあると言うことを示す大きな役割があった。そのおかげで存在感が薄いとは感じない、いい描き方だったと思う。最終的なブルースの行動にも、彼の存在は少なからず影響していると感じた。

ゴードン:バットマンとのバディ感が強かったのが嬉しかった。今回も熱くて正義感の強い、実直な彼の姿は、ゴッサムの中で一段と輝いている。

セリーナ:今までの実写化キャットウーマンの中で一番コミックのイメージに近かった(ビジュアル含め)。バットマンとのロマンスがちょうど良い塩梅で好み。鋭い爪がキュートでクール。

ペンギン:鼻がとがってなくてシルクハットも被ってないペンギン。彼とのある種の戦闘シーンとして、カーチェイスを持ってきたのが好き。横転後のバットマンが歩いてくるカットの画が超いい。

リドラー:頭脳犯としてのリドラーを映画館で見れたのが嬉しかった(おもしろ緑タイツじゃなくて)。バットマンの正体に辿り着くというのはコミックでもやり遂げていた彼なので、実写映画でもその役どころを持つのが彼っていうのが良い。マスク被ってても素顔でも、らしさが出ていた。

ゴッサムの狂人:今回のバットマンの描かれ方の中で、周りから見た『蝙蝠タイツの暴力男』の気味の悪さをしっかりと描いてるのが素晴らしかった。彼の正体を知らない人々視点の不気味さ、後ろめたい罪人たち視点の恐怖、ここに関しては実写作品の中では一番だったと思う。
ヴィランたちとバットマンの間にはしっかりと線があるのだけれど、両者の間に大きな距離はない。バットマンもリドラーもゴッサムの産み出した怪物で同類だが、バットマンの方はギリギリまだラインを超えていない。それは殺人だったり、道徳心だったり。バットマンという作品は媒体がなんであれ、このラインを超えた狂人とギリギリ踏みとどまってる狂人の話だと思ってるので、今回のように同類感を明確に描いてくれると嬉しい(バットマンとリドラー、バットマンとキャットウーマンetc)。

総合:1ファンとして楽しんで観れたし、面白かった。バットマンもゴッサムの街並みも他とは違う良さ、新しさがあって飽きない。
全体を通した感想としてはよく言えば安定感があったし、悪く言えば大きな盛り上がりどころがなかった。ネズミの謎の意外性の無さとか、リドラーとの直接対決がなかったとか、小さな不満点はところどころある。しかし、それ以上に今回のブルース/バットマンの描かれ方は良かったと思う。
ラストの『悪を裁く』ことにしか関心のなかった若きバットマンが『人々を護る』方に動けたという成長は、今回のバットマンだからこそ印象的なシーンになっていると感じた。
ところどころ感心するほどカッコいい画があって興奮した。画作りは全体的にすごく高い水準だと思う。中弛みとまではいかないが、多少間延びしていると感じたシーンはいくつかあった。
りんコ

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