常盤しのぶ

THE BATMAN-ザ・バットマンーの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

4.8
石田彰がアヴェ・マリアを歌う。それだけで本作を観る価値は十二分にある。リドラーの狂気に満ちた知能犯罪は私の中の石田彰像にベストマッチしていた。字幕よりも吹き替えで観たいと思った作品は珍しい気がする。これから本作を観る人は是非とも吹き替えでの鑑賞をオススメしたい。

本作は過去作バットマンを観ていなくても楽しめる。『両親を殺されて復讐の為にバットマンとなり、ゴッサムシティに蔓延る悪を夜な夜な物理で殴りまわっている』がわかればヨシ!

その主人公ブルース・ウェインは日常のあらゆる事を執事であるアルフレッドに任せ、自分では何一つできないポンコツである。来訪があってもそれがたとえ次期市長でさえガン無視、公の場には滅多に現れず、出たとしても類稀なる陰キャムーブで他人を避けまくる。基本的に画面が暗く陰鬱な本作だが、彼のその人間味あふれる陰キャムーブが程よく癒やしとなっている。バットマンとなった彼は正体を隠すためにあえて口数を少なくしていると最初は思っていた。しかし本作を最後まで観てから確信した。あれはただ単に『他人に対して何を言ったらいいかわからずに内心あたふたした結果、外野からは無口に見えた』だけだ。かわいいぞ、ブルース・ウェイン。

子供には優しい眼差しを向けるブルース、キャットウーマンには強気に出られないブルース、なんか猫には異様に懐かれるブルース。どのブルースも、かわいい。

本作のバットモービルも過去作同様ハチャメチャにかっこいい。エンジン音がまるで馬の嘶きで、生きているように意気揚々とハイウェイを駆け巡る。しかし、本作では少し出番が少なく、物足りない印象を受けた。バッチバチにかっこよかったのでもう1シーンほど欲しかったのが悔やまれる。次回作での出番増に期待。

もうひとつ好きなシーン。リドラーに接触するきっかけの証拠を見つけるシーンでバットマンが現場を少し荒らすのだが、そこに居合わせた警官の『あーあやっちまったよ、俺もう知らねーからな!』みたいな反応をしていたのがかわいくて好き。本作はカワイイと暴力でできている。