おーもり

THE BATMAN-ザ・バットマンーのおーもりのレビュー・感想・評価

3.9
とても暗くて顔色悪い新人ヴィジランテ。
影から静かに歩み寄る異形に成っている。今までで一番怖くて壊れそうで、一番闇に近いバットマンだ。
アクションの大立ち回りも楽しいが、よりサスペンスに注力し、バットマンが与える恐怖、ブルースが直面する恐怖を描いている。

街を全ては監視できない。
だからそこに居るかも知れないという恐怖を悪党に植え付ける。

これが悪党目線で見るバットマンの居るゴッサムシティだ。という描写が素晴らしかった。カーテンと傘を持たないゴッサム市民も恐れおののく都市伝説。
それでいて、姿を見せれば猛々しく暴力を行使する鎧の男。殴られても撃たれても爆弾が炸裂しても決して止まらない。
獰猛で怪物のようなエンジンを唸らせる改造車で何があっても止まらない。
その裏にある強迫的な犯罪への憎悪と、爆発寸前の覚悟が怖い。

キャットウーマンことセリーナもカッコよかった。
バットマンの悪の道を選択したそいつが悪いんだ、と言わんばかりの詭弁に対して、選択が出来る特権を持っているは金持ちだけだと、この世の真実を突きつけるさまも良い。
まだまだ未熟なブルースは、ゴッサムの上辺しか見れていない事もよく分かる。別れのT字路でミラー越しに見送る別れも染みるよ。
アンディ・サーキスのアルフレッド風格が強すぎじゃん。ブルースより強く見せない様に杖つかせたけど、それは相手の油断を誘う作戦なんでしょう?

そしてリドラー。
バットマンに対する敵は、物理的に暴れるヴィランよりも、バットマン個人の精神を揺さぶるヴィランの方が面白い。
リドラーの仕掛ける計画は、バットマンが謎を解かないことには進まない。
不正を憎みゴッサムを浄化したいという願いが、復讐へと変わってしまった似た2人。
強制的に共犯関係に貶める物凄く恐ろしいヴィランだ。

復讐という目的に心折れそうになった彼が最後に、目の前にいる人を助ける瞬間が感動的すぎる。
ヴィジランテがヒーローになったターニングポイントだ。この瞬間で暗いブルースにやっと少しの光がみえてとても良い。

公開前は、なーんだバットマン単発映画か。DCはユニバース化チグハグだなぁ。なんて思っていた。
でも今作見たら、他の作品と無理して整合取れるように繋げて制約だらけになるよりも、自由に色んな話を作ってくれるのもメッチャ良いじゃん!と思いました。

余談ですが、おいコラと笑ったのは、得体の知れないUSBを、基幹系に繋がってるオンライン端末に挿すな!と言う所。GCPD情報セキュリティ部が大激怒だ。
今後の社内教育でインシデント事例に載っちゃうゴードン警部補かわいい。
そして ユーアーエル...URL!?とかゴッサム的ITリテラシーが問われる超難問リドル。これはバッツにしか解けませんわぁ。