カフカさん

ゲット・アウトのカフカさんのネタバレレビュー・内容・結末

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

【あらすじ】
黒人のカメラマンのクリス・ワシントンは、白人のローズ・アーミテージと恋人であった。ある日、2人はローズの父ディーンや母ミッシーに挨拶をするためにアーミテージ家へ赴く。クリスは彼自身が黒人であることを気にしていた。

しかし、クリスの不安は杞憂であった。アーミテージ家は2人の関係を歓迎し、温かくもてなしてくれた。
同時にクリスは、アーミテージ家にジョージナとウォルターという黒人の使用人がいること、また彼ら使用人の言動が不可思議であることから違和感を持つ。

不思議な体験をするクリスであったが、ローズの母親であるミッシーに催眠術にかけられ禁煙に成功する。
他方、アーミテージ家のパーティーが開かれ、そこでクリスはローガンという黒人の男性に話しかけるが…。


【感想】
映画全体の緊張感とラストの疾走感が凄い。思っていた物語と違って、いい意味で裏切られた。展開が読めなかった。

正直、クリスがアーミテージ家から逃げ出そうとするシーンまで、ローズは唯一まともでクリスの味方だと思っていた。
だけど、クローゼットの箱から黒人の男性との写真が出てきた時、アーミテージ家全員集合の際にまだ「車の鍵が見つからない」と言う辺りで、「あぁ…」と思った。

最後のクリスの脱走シーンは迫力がありすぎる。
アーミテージ家の弟や父、母と戦い、やっと逃げられたと思ったら、ジョージナ(中身は祖母)とウォルター(中身は祖父)、そしてローズが立ちはだかる。
死闘を繰り広げているとパトカーがやって来て、「警官にクリスがローズを殺害しようと勘違いされるんだろうなぁ」と考える。しかし、パトカーからロイドが登場してほっとした。
つまり終盤までスリルがあった。アーミテージ家のクリスへの執念はおそろしや。

ジョージナとウォルターという2人の使用人の正体がラストに判明するけど、この辺の伏線回収が凄かった。
ミッシーがジョージナ(おばあちゃん)に厳しいとローズが言う場面があったが、これはいわゆる「嫁姑の戦い」なんだろう。他方、ウォルターが夜中に全速力で走っていくのは、彼がマラソン選手だったローズのおじいさんだから…なるほどと思った。
ローガン(黒人)が、年上の白人の女性と結婚しており、白人らしい振る舞いをするのもヒントや伏線なんだろう。

なおクリスと連絡が取れなくなった時、親友のロイドさんはクリスを救うために一生懸命あの手この手を尽くす。「ロイドさん、頑張れ!」と思った。
だけど、やはり主人公(クリス)は強かった。もっともロイドがあの状況でやって来て、しかも警察よりも早く現場に到着してクリスを車に乗せた功績は大きいと思った。

また、ジョージナが夜中にクリスの背後を通りすぎるシーンや、彼女が泣きながら笑うシーンは怖かった。ジョージナ自身はアーミテージ家の被害者だからかわいそうだけど、本当にインパクトが強い。

物語や展開が読めなかった。
黒人が誘拐されるという点では黒人差別がテーマなんだろうと思っていた。
だけど、アーミテージ家にやって来る白人たちはクリスや黒人のことを誉めちぎる。「肌が黒く醜くて、知能が劣っている」(あくまで白人による差別的な言説として書く)とは言わない。またアーミテージの父親のディーンはバラク・オバマを支持している。
つまり、アーミテージ家やパーティーに参加してる白人たちは、黒人のことを尊敬している。
だから、この映画は黒人差別がテーマだと見せかけて、違う展開に持っていくのだと思っていた。

だけど、終盤まで見ていくと、パーティーに参加している人たちは、黒人を自分達の幸福や快楽のためなら犠牲になっても構わない人たちと見なしている。つまり、これも結局黒人差別。

映画は、あからさまに差別をしている人だけではなく、建前では黒人を擁護し称賛しつつも、本音では蔑視してる人(クリスが2階に行くと、急に静まり返る白人のように)を批判しているのかなぁと思った。リベラル批判みたいなものもあるのかもしれないとも思ったり。

劇中、クリスのスマホのカメラのフラッシュでローガンやウォルターが一瞬我に返った。なぜ本来の自分を取り戻すのが、カメラのフラッシュによるのだろうか…気になった。

他にもたくさん伏線などが散りばめられてるのだろう。
2回目以降も楽しめる映画だと感じた。
カフカさん

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