【1966年キネマ旬報日本映画ベストテン 第10位】
エドワード・アタイヤの『細い線』を翻案した作品。成瀬巳喜男としては異例の本格ミステリー映画。
殺人という物語的にも、演出的にもおよそ成瀬作品とは思えない。
成瀬としては挑戦だったのだろう。しかしそれは決して成功したとは言えないと思う。正直成瀬作品としては駄作の部類に入るのではないか…
物語としては小林桂樹演じる田代にひたすらイライラするし、ミステリーとはいうものの早い段階で真相を言ってしまうので緊張感が続かない。
後半は新珠三千代演じる妻に描く対象がシフトしていくものの、十分に描けているとは言い難い。
ミステリーという構造と成瀬演出がどうしても合わない。いつもの繊細な演出は鳴りを潜め、どうにも大仰な演出が目につく。音楽にしろカメラワークにしろ。
田代の勝手さ、そして妻と殺された女の夫の反応にリアリティを感じられない。
うーん、これは厳しい…成瀬作品ではじめてノレなかった。