コミヤ

素人の乱のコミヤのレビュー・感想・評価

素人の乱(2008年製作の映画)
4.5
高円寺の有名人でリサイクルショップ『素人の乱』を経営する松本哉氏のドキュメンタリー。PSE法反対デモから始まり、新宿東南口駅前広場での鍋パーティ「クリスマス玉砕集会」や路上秋刀魚焼きなどの警察沙汰のイベントを経て、杉並区議選挙出馬までを追う。
撮影も行う監督が松本氏とその仲間達とかなり近い間柄であることは彼らとの会話やパフォーマンスへのリアクションで分かるんだけど、本作には仲間内での痛い内輪褒めにはならない魅力や問題提起が含まれており、且つ尺が80分と短いのもあって、飽きが来ないまま観終わった。松本氏の父の葬式の時の表情などはその間柄だからこそ撮れたもののような気もした。
魅力の要素としては松本氏や友人の山下陽光氏らが持っている、暮らしが脅かされることへの怒りさえも京楽に変えてただひたすらにその場を楽しむという姿勢にあって、「〜のためのデモ」ではなく、「デモのためのデモ」を求めていたり、区議選選挙期間中も高円寺駅前ロータリーでの選挙活動と称したライブなどのどんちゃん騒ぎを起こしたいから出馬したなどの発言に笑ってしまう。
周りへ配慮や社会人としての常識が欠けていると一言で一蹴されてしまう活動ではあるが、蹴りを入れる前に「そもそもなぜ禁止されているの」を考える契機になる。つまり彼らは何も考えてないようで具体的な現実に対しての彼らなりの考えを持って活動している。そして何も考えてない大人たちに逆に問い直す。「公職選挙法で禁止されている気勢を張る行為とは何なのか」「街は誰のものなのか」
そこには確かに普遍性があり、だからこそ内輪で閉じてなくて外に開かれている。劇中で登場する共産党議員や北中商店街の重鎮、東京藝大生、法政大生が彼らをどう観ているのかを観ればその開きを感じ取れる。(もちろん映してないものも多くあると思うけど)現在、松本氏に触発された中央大生がダメライフ愛好会を設立し、その運動は各大学に広がりつつある。素人の乱は続く!
コミヤ

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