コミヤさんの映画レビュー・感想・評価

コミヤ

コミヤ

かづゑ的(2023年製作の映画)

4.6

素晴らしかった。ハンセン病患者の療養所長島愛生園で80年暮らすかづえさんの生き様。社会の言葉としての「ハンセン病患者」ではない「本物を撮って欲しい」という覚悟から始まる。「あの暗さをどう乗り越えたのか>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

4.6

『ゴースト・トロピック』にも通じる、人々の無数の記憶が積もり積もった世界において、ふとした瞬間に誰かの眼差しは今ここにいない別の誰かの眼差しになり得えるという希望が確かに描かれていた。その瞬間を図らず>>続きを読む

WILL(2024年製作の映画)

4.0

矛盾に悩むことができる純粋無垢な人たらしのエゴイスティックな意志の話なのに、それでも何に惹かれてしまうのか…諸手を上げて絶賛はできないけど観てよかった。服部文祥の登場も嬉しい狩猟ドキュメントは、彼の在>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.6

むちゃ良かった…伝達可能性と不可能性が蓄積し、浮遊する世界を彷徨う時間旅行。偶々最近読んだ『断片的なものの社会学』に通じる時間と祈りを感じた。時間の流れを忘れる幸福と時間を感じ続ける孤独。ふとした孤独>>続きを読む

加藤くんからのメッセージ(2012年製作の映画)

4.5

萌え声OLこと綿毛監督による妖怪になりたい加藤志異さんのドキュメンタリー。「これから空を飛びます」「はぁい」の冒頭からただならぬ期待。叫び続ける「妖怪になりたい」という不可能への挑戦が確実に周囲を動か>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.7

これは生涯ベスト級だった…露悪さと扇動によるドラマを一切廃する姿勢や、この瞬間にこの人の中で確実に何かが動いたと分かるショットの数々が本当に素晴らしかった。これがヒットすることは日本エンタメのスタンダ>>続きを読む

ヤクザと憲法(2015年製作の映画)

4.6

冒頭、事務所3階にある居住空間に置かれた大きなテントバックを見て「マシンガンですか?」臆せずディレクターが聞くと、「そんな訳ないじゃないですが、日本だと銃刀法違反になりますよ」と焦る部屋住みを逃さずズ>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.2

初アキ・カウリスマキ。
ラジオからウクライナ侵攻を伝えるニュースが鳴り止まない現代劇において、電話番号の書かれた紙を使ってドラマを産み出す脚本や、不寛容な現実を前に絶望し切らない登場人物たちからファン
>>続きを読む

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.5

情動を感じる時折りのカメラの振りやズーム。しかめ面のリジーが時折り見せる微笑み、鳩を優しく撫でる指先など自分の予期せぬ情動を確かめ、でもそれに固執せず更新し続ける。それを決して捨てる訳ではないし、忘れ>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.5

中盤までウトウトしてしまったが…今のカットが次にどんなカットに繋がってしまうのかというスリリングな想像力が働きまくる終盤のチェイスが至高。安易さがない程よい距離感。キング・ルーからクッキーへの視線と表>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.4

2回目
坂口恭平、宮台真司、中沢新一を経て、なんだか凄く楽しめた。母親だと思った人が母親になること、出鱈目を出鱈目として体験すること、脳が計算するロジックでは片付けられないものがあること。苦戦中の『レ
>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.5

堪えきれない悲しさを、変化を信じ続ける意志で乗り越える。それを繰り返す。天気を確認し、木漏れ日を喜ぶという意志!些細だけど、その意志故のあの人間関係という説得力。鑑賞者含め、それは平山だけに限ったもの>>続きを読む

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

4.5

積み上げられる時間によって立ち上がってしまう言語的空間(王国)は内側を守るシェルターになり、外側を排除する壁になる。なんだこれは…という時間がひたすらに積み上げられた後に、舞台の無い、虚実が行き来する>>続きを読む

GIFT(2023年製作の映画)

3.7

フィルメックスにて石橋英子即興演奏付き上映。音楽主体の繋ぎなのに、音より画に意識が向き過ぎててこの形式の良い鑑賞者ではなかった。自分は視覚優位な人間なんだな、と思った。水は低い方に流れる。多層的なシス>>続きを読む

Playback(2012年製作の映画)

4.6

三宅唱史上最もホラー。同じフレームに入ることのない者たちの切り返しがこんなにも怖いなんて。にゅっと伸ばした手を村上淳の肩に置く三浦誠己の初登場が忘れられん。自分を形作ったと思い込んでいる選択と結果の積>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

4.6

これでもかというサービス精神とプロフェッショナリズムとアクション俳優へのリスペクトが込められた肉体的かつおバカで知的な超感動大作。シリーズ最高傑作。アクションシーンで何度も泣きそうになった。そして非常>>続きを読む

国葬の日(2023年製作の映画)

4.5

背景や立場の違いによる関心の強弱。その強まった関心の熱も数日経てばに冷めて日常の中に溶けて見えなくなる。その繰り返しでいいのか。その日は分断を強めただけなのか。立場を表明しつつ分断を無くすには。意地悪>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.1

2回観て2回とも途中寝てしまった…でも好きなところはめちゃくちゃ好きな映画。「暇と退屈の倫理学」を思い出す豊かさの後の幸福論。そして濱口竜介。演技と真心と偶然。エレベーターでのマジカルな偶然≒必然にど>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.7

何を書くかで己のジェンダー観が丸裸になってしまいそうで少し覚悟がいるけど、現実社会=男社会の正しくなさ(滑稽さ)とバービーワールド=女社会の正しくなさの双方が向き合い、折り合いをつけた理想社会を目指し>>続きを読む

ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳(2012年製作の映画)

4.4

「日本全体が嘘っぱち」そこには何が覆い隠されているのか。歴史の隠蔽によって同じ轍を踏む日本の嘘を取り続けたカメラマン福島菊次郎。「問題自体が方を犯してるならカメラマンも法を犯す」、「政治家に操られる惨>>続きを読む

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

4.5

「晩酌人と花婿が共に反政府活動による前科者という繋がりから生まれた類稀な結婚式であります」というスピーチから前科列挙のテロップロールという最強アバンで始まる神映画。

天皇制も家父長制も解体し、神のも
>>続きを読む

REVOLUTION+1(2022年製作の映画)

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足立正生監督めっちゃいい人だった。元々は国葬を爆破する予定だったらしい。内省的過ぎるのは山上徹也のTwitterから。面白いかと言われたら面白くないし色々酷い。暴力を肯定も否定もしてないスタンスらしい>>続きを読む

アデュー・フィリピーヌ 2Kレストア(1962年製作の映画)

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親愛なるシネフィル・小ダルマ君生涯の一本。「アデューフィリピーヌの記憶がある限り、俺は永遠のバカンス中なんやで」とのこと。『メーヌ・オセアン』で止めればいいものの、2本続けて観たら、その前の短編ドキュ>>続きを読む

メーヌ・オセアン 4Kレストア(1985年製作の映画)

4.6

例によって前半たっぷり寝てしまったけど、リアリズムからはかけ離れたなし崩し的な展開で、即興バンドが結成されたり、メインの被写体が変わったり、滑走路走る飛行機から降ろされたりなど破茶滅茶。イヴ・アフォン>>続きを読む

なぜ君は総理大臣になれないのか(2020年製作の映画)

4.6

民進党が分裂し、政権交代のために希望の党に入党したものの、代表小池百合子の排除発言によって自分の選択の是非に強い迷いが生まれてしまった小川淳也。被写体からディレクターへの強い信頼があるからこそ、「どう>>続きを読む

ウンベルトD(1952年製作の映画)

4.4

初ヴィットリオ・デ・シーカ。
前半寝たけど、ようやくあらすじに沿って物語が展開する後半から覚醒。前後の脈絡を理解せずに観た、マリアの起床→金網の窓の猫を見る→起きてキッチンへ移動→マッチを壁に擦ってコ
>>続きを読む

テクノブラザーズ(2022年製作の映画)

4.6

初大田原愚豚舎作品。日本映画では今年ぶっちぎりと思わせる快作。爆笑続きの幸せな時間だった。本編では観客ノーリアクションだったテクノミュージックもとっても快楽的。出演者は主演の柳明日菜さん以外ほぼ身内と>>続きを読む

略称・連続射殺魔(1975年製作の映画)

4.0

永山則夫という連続射殺魔が観たであろう風景を繋ぐ。『self and others』の25年前、(完成は69年なので31年前)にこんなアバンギャルドな風景論映画が完成されていたなんて…足立監督曰く「作>>続きを読む

風立ちぬ(2013年製作の映画)

4.4

創造的人生の期限は10年。ピラミッドのある人生を選ぶ。「貧乏な国が飛行機を欲しがり、俺たちは飛行機を作る。矛盾だ」風という偶然によって次郎と直子が繋がれてしまう矛盾。飛行機という少年の美しい夢は美しく>>続きを読む

素人の乱(2008年製作の映画)

4.5

高円寺の有名人でリサイクルショップ『素人の乱』を経営する松本哉氏のドキュメンタリー。PSE法反対デモから始まり、新宿東南口駅前広場での鍋パーティ「クリスマス玉砕集会」や路上秋刀魚焼きなどの警察沙汰のイ>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.5

1回目爆睡してしまったけど、傑作の読後感だったのでリベンジ。
他者によって記録された自分自身を通じて、他者の視点を知る、それと同化してみる。私はあなたではないけれどかつて知らずに過ごしたその人が自分の
>>続きを読む

書かれた顔 4Kレストア版(1995年製作の映画)

4.6

『書かれた顔』2回目。レジェンド俳優たちによる演技論、俳優論、舞台論、映画論についての戸惑いドキュメンタリー。女とは?俳優とは?フィクションとは?
自分自身への客観的な視線による自覚。そこで見つかった
>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

4.2

自己肯定感の低い少年が自分のことを大事にしてくれる友達を守るために、自分が自分の人生を肯定するために、邪魔するやつをぶっ殺す!「分からないよ!」子供の判断の付かなさも度々言及されるように、私とあなたと>>続きを読む

Ryuichi Sakamoto: CODA(2017年製作の映画)

4.4

綻ぶテクノロジーと人間の距離感。いつしか自然を鋳型にはめる人間的な自然という不自然さへ嫌悪感を抱くようになり、自然の音響に耳を傾けるようになった坂本龍一の変遷を、彼のキャリアや時代を俯瞰しながら辿る。>>続きを読む

ボディ・スナッチャー/恐怖の街(1956年製作の映画)

4.2

初の菊川ストレンジャー。
「あの人、伯父さんじゃありません。全然知らない人です」という不可解な疑惑の増殖、そしてトンデモな真相発覚からの「こいつらももう手遅れかもしれない」という八方塞がりのチェイスが
>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

4.1

脚本家複数クレジットにあまりいい話は聞かないということを実感済みなのだけど、やはり本作の脚本の尻窄みが凄い。だけど片山慎三の一級エンタメ演出でかなりの見応えのあるミステリーサスペンスに仕上がっていた。>>続きを読む

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