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散歩する侵略者のMOEのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
3.0
初黒沢清作品だったんだけど自分と相性良いかはすごぶる微妙。
今回の作品はもともと舞台劇だったと後から知って納得したんだけど、ひとつひとつの設定や出来事、その帰結が「作者の都合によって動かされている」という印象を強く受けてしまった。

空間と時間の制限から、比喩やメッセージを分かりやすく観客に示す必要があり、そういう文法がある程度共有されている戯曲に対して、映画って個人的にはもう少し幅が広がる表現だと思っているので、ある事象に対しての登場人物の行動や発言の変化がちょっと過剰すぎるように思われた。そちらに気を取られてしまって、監督が伝えようとしたメッセージがうまく受け取れなかった。

それと、本作で重要な「概念」という概念そのものの定義があいまいで、だいぶ恣意的に酷使しちゃった感じがあった。概念を奪うと行動も変わるの?概念に紐付いていた行動までゼロになるものなの?
仕事柄、「概念理解が難しい」という人と出会うことが多いので、作中で描かれていた「ある概念を失った」人々の姿は自分自身の経験とはいささかずれて見えてしまった。これ、脳神経系・発達系に詳しい方が見たらどう分析するのかな…とか。

結果的に木を見て森を見ずな鑑賞体験になってしまった。シンゴジはじめ、ディティールに凝った映画に慣れきっていたからかな。


個人的には、人類と侵略者との間で揺れながら静かに狂っていく長谷川博巳を見る映画だなあと感じました。
シンゴジの矢口蘭堂が記憶に新しいけれど、ドラマのMOZUの黒幕とか、実写進撃の巨人のシキシマとか、狂気に振り切れる演技好きなんだよね。
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