Eike

ミッドナイト・エクスプレスのEikeのレビュー・感想・評価

3.2
1970年、イスタンブールの空港で2kgの麻薬を身につけて国外に出ようとした米国人ビリー・ヘイズが捕えられ、収監された悪夢のようなトルコの刑務所での日々を描いた「問題作」。

公開当時には実話に基づいたそのセンセーショナルな描写が話題になりました。
また脚本のオリバー・ストーンが一躍注目を集めるきっかけとなった作品でもあります。
地獄のような世界に放り込まれた若者が過酷極まる環境の中で自由への渇望を抱えて生きる姿に人間の尊厳を活写した問題作!

と、手放しで褒める作品評が公開時には多かったのだが、ロードショーで見た時にはもちろん幼心に「トルコ、怖えぇ〜」なんて思ったもんです。
しかし、よく考えてみればこの主人公に同情するのもおかしな話なのだ。
彼は自らの意思で麻薬の密輸を企てた訳で、この境遇も言うなれば「身から出た錆」なのだ。
ところが本作ではその部分にはほとんど目をつぶっております。
「映画」ですから、と開き直るのは簡単なのだが問題は本作が「事実」を売りにしていた点。

後にビリー・ヘイズ自身が本作で描かれているのは彼が経験した事実を大幅に「脚色」したものであると「実録性」を否定しております。
改変された事実には物語の核心とも言えるいくつかの点もあり、その部分が「嘘」となると本作への見方はちょっと変わってしまうのも事実。

とは言え「フィクション」として割り切って見る分にはアラン・バーカーの抑制の利いた演出、ジョルジョ・モロダーのシンセサウンドの効果もあって見応えのある作品となっているのは確かです。
しかしサスペンスとしてもヒューマンドラマとしても安易なエンターティメントを期待するのは賢明ではないかな。
Eike

Eike