石

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?の石のネタバレレビュー・内容・結末

2.1

このレビューはネタバレを含みます

 一つ言えるのは、岩井監督とは描こうとしたものが違うという事。岩井版が青春群像劇であるなら、今作は典道となずなの赤い糸物語。じゃあその"赤い糸"が良き事として丸く収まっているかというと、どうかなと。

 岩井版は気づいたら戻っていたという展開でそこに物語上特に触れることもない薄っすらとしたifでした。それが今回のアニメ版の典道は意図的に時間の逆行ができます。だからなずなの為に戻る理由というのは絶対に必要で、今回はそれが淡い恋愛感情なんですな。4回くらい戻ってましたけどその動機は変わらず恋愛感情。彼女のために尽くす道理はどこにあるのか、というのは気になったところ。

 また、なずな側の逃避行の動機は当初親諸々への反発であり、淡い恋心はあるものの典道に対しては逃避行の添え物という位置づけが強かったように思えます。ただそれがラストのif放出で一気に愛に傾きます。どの未来でも典道と共に幸せを育んでいることに痛く感動した……ということなのでしょう。これを赤い糸と呼ばずに何というのかということなんですが、素直に良しとは言えないかなと。これ実は他のメンバーも色々なifを見ているじゃないですか。ということは今地続きの可能性と言うよりは、過去から枝分かれしているあらゆる可能性が見えていますよね。ということはどういうことか。つまり彼ら自分に都合の良い未来しか見てないんですよね。特になずなはどの未来でも典道・祐介を踏み台に多くの幸せを得てるわけですよ。キスとかしてる場合とちゃいますよね。なずなはあらゆる可能性に感謝するべきなんですよ。典道が少なくとも劇中4回も戻って助けてくれたことに何か言うことはないんですかね。その努力を無視してしけ込むってのは、まあどうなのかなと。ありがとうくらい言ってもいいじゃない。都合の良い解釈の"赤い糸"だなと思ったり。
石