メモ魔

夜は短し歩けよ乙女のメモ魔のレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
3.4
直感で観るにはあまりに難しい作品。この映画を初見で楽しめる人の感受性と考察力のいかに孝明なことか。
原作を作者の意図に至るまで読み込み、その上で観るべき作品だと思った。

扱っているテーマは、軸は?この作品を通して監督が視聴者に伝えたかったメッセージはなんだ、?

荒波のように押し寄せる時の流れは、身を任せた途端その勢いを増し一瞬のように夜が過ぎていく。そして心が先に老いてしまった者は、その刹那の夜にこう嘆くのだ。かつての自分に許された時間もまた短かったのだと。だから
[夜は短し、歩けよ乙女。]

人に許された時間は少ない。それを実感したその瞬間から、自分の時計は速度を増してしまうものだ。あの時こうすれば良かった。あの時はこうだったと嘆く時間が若い自分にあっただろうか。懐かしむ時間など考えもしなかった、前しか見れない若き自分を思い出してみて。
そんな話か。

若い頃はそれこそカオスのように環境が2転3転し、目まぐるしく自分の感情にも起伏という大波が寄せては引いてを繰り返す。その若かりし頃の感情をアニメーションにて再現した作品。
と俺は捉えた。
内容自体はくだらないことばかりなのに、本気で取り組む学生の姿を観て、そんな時こそ1番長い夜を過ごせた貴重な時間だったんだと更けることができる。

内容の部分で気になったのは、時計の流れる速さが、人によってそれぞれ(歳をとっている人ほど早く時計が回る)変わる部分か。
直感でこの部分を理解するなら、まあ20代の俺でも最近感じるあの現象だろうな。
[あれ?、なんか1週間経つの早くね?って話したのもう1年前?!]
この現象。人は体感時間で言えば、人生の折り返し地点が20歳らしい。ジャネーの法則ってやつ。
これを予防(まぁ病気じゃないから予防とは言わんか。)するには、毎日の生活に新鮮な刺激を与えてやることが良い。

この映画はそれをアニメーションで再現しているシーンが多く観られる。
主人公の女の子の時計が1番遅いのは[新鮮な経験をしている]ので言うまでもなく当然だが、そんな女の子と一緒に過ごしたおじいちゃんの時計が、遅くなりついには逆戻りし始めるシーンは良かった。
人が記憶に刻む時間は、年齢に寄らず、その心にのみ依存するって部分が良い。どんなに歳を取ったって新しい自分を見つける挑戦をして止まない心を持っていたいなとこの映画を観て思った。

加えて気になったシーンは主人公(男)がヒロインに恋心を寄せるあまり空回りしてしまうシーンか。特に風邪を引いた時の脳内会議は白熱したものがあって良かった。
[このまま彼女に思いを打ち明けることなく、独りぼっちで明日死んでも悔いがないと思う者は、、、前へ‼︎]
このシーンが個人的にはこの映画のベストカットかな。
思いを打ち明けるって、自分が明日死ぬこと覚悟してやっと決意できることなんだ、って強い意志をキャクターから感じた。そこに至る感情が愛情なのか、恋心なのか、はたまた性欲なのか。自分でも分からないこのカオスな感情を結論無しでいかに視聴者に伝えるか。この部分をアニメーションを使って必死に訴えようとする監督の意志が全面に出てて好きだった。

他に気になった所と言えば、、、
やはり声優か。花澤香菜の威力たるや、、ぜつ、っだいっ
最初黒髪の少女が一言目を発した時点でグッと作品に引き込まれた。この人の声は作品やキャラを問わず無理やり目をぐいっと引っ張られるような半強制的な魅力がある。
他にも有名どころだと星野源や神谷浩司か。神谷浩司はほんとにあららぎ君やね笑
[黒齣]とか出てきてもこの人さえいればなんの違和感もないよ笑

あとは共感性羞恥がすごい、、笑
屁理屈踊りの所とかはもうなんか、、謎です笑
何やってんのあれ?笑
ここのシーンから何を視聴者は汲み取ればいいの?わからないわからないわからない。
他にも一般的に理解されないような部分が多く見受けられた気がする。

批判ばっかだけどやっぱこの作品、1番気になるところは起承転結があまりにブサイクな所。
2時間の映画であるなら2時間の中に起承転結の流れを組み込むべきだ。長い映画なら尚更のこと。でないと視聴者側は自分の感情をどこでボルテージに持っていけばいいのか感覚で分からない。感覚でわからなければ考えなければならない。映画を見る上でこの思考はただのノイズでしかない。するっと入ってくる映画ほど起承転結がしっかりしてるものだ。
この映画は2時間の中に短篇が3つ入っているイメージ。起承転結が3つセットで入ってる。
こーれじゃあだめだ。仮に原作がそういった構成であったのであれば、構成の人が原作を曲げてでも映画の中に起承転結を作り上げるべきだった。

総評
声優が良い。主題歌もアジカンで申し分なし。アニメーションの世界観も新規性をとことん問い詰めながらもどこか懐かしさを覚えるような痒いところを攻めてて個人的には好きだった。感情がそのままキャラクターや背景に出てくるアニメーションってゆーのかな。そんな形に囚われない自由なアニメーションだった。
それ故にやはり残念だ。
[何がいいたいのかイマイチ分からない]
2時間を通してこの監督は何を伝えたかったのか。軸が見えない。
目で追う分には申し分ない作品だと思うが、いざ本腰を入れて見ようとするなら2週は覚悟した方がいいと思う。
1周目からこの作品の真意を知るのは至難の業だと思う。(ってか俺見るの2回目だけど未だによく分かってない)

3.4点
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