めしいらず

ヤコペッティの 残酷大陸のめしいらずのレビュー・感想・評価

ヤコペッティの 残酷大陸(1971年製作の映画)
3.8
恐ろしくてずっと観ないできたヤコペッティ作品を初鑑賞。ヘリコプターごと黒人奴隷制度の時代のアメリカ南部にタイムスリップした現代の撮影クルーが、そのありのままを取材する体のドキュメンタリー風映画。ヤラセ演出でも知られるヤコペッティではあるけれど、この作品には我々もその場で目の当たりにしているような恐るべきリアリティがある。一向に悪びれる風がなく寧ろ誇らしげで、嬉々として取材を受ける白人たちの様子といい、差別なんて生易しく思えるほどに次元が違う奴隷制度の凄まじさといいトラウマ級の映像が続く。奴隷船、消毒、餌やり、奴隷売買、奴隷牧場、黒人狩り…。黒人は家畜であり人権蹂躙を取り沙汰すれば白人は大笑する。黒人は人間未満だとトンデモ学説を滔々と述べる学者にユダヤの出自を語らせる意地悪。見世物小屋的な露悪趣味。そこに重なる時にコミカル、時に勇猛、時にエモーショナルなオルトラーニの旋律。この史上稀なる惨たらしい映画に世にも美しい主題歌を充てる作り手の神経は一体どうなっているのだろう。凄い。しかし邦題がひど過ぎる(原題は「さよならアンクル・トム」)。
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