MasaichiYaguchi

犬ヶ島のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.9
ウェス・アンダーソン監督がストップモーションアニメで描くのは、ディストピアとしての近未来の日本を舞台にした人と犬たちの寓話。
舞台が日本なので日本人が登場するのは勿論だが、漢字やひらがな、カタカナ表記が溢れ、日本語の台詞も一杯出てくる。
この日本人ボイスキャストを夏木マリさん、村上虹郎さん、ヨーコ・オノさん、渡辺謙さん、高山明さん、野村訓市さん等が演じている。
そして本作の犬たちのボイスキャストを、 ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、スカーレット・ヨハンソン、ティルダ・スウィントン、フランシス・マクドーマンド、リーブ・シュレイバー等が担当していて、びっくりするくらい豪華!
CGアニメ全盛時代に恐ろしく手間暇かかるストップモーションアニメで描く人と犬との絆の物語には、日本の伝統文化をはじめ、随所に黒澤明監督作品へのオマージュが溢れている。
ただ本作は単なる日本趣味のジュブナイル物ではなく、世界を席巻する排外主義やポピュリズムを寓話仕立てで描いているように見える。
主人公の少年、小林アタリが愛犬スポッツを探しに向かった犬たちを隔離する「犬ヶ島」は恰も第二次世界大戦下のユダヤ人ゲットーのようで、そして犬の隔離政策を進め、社会のスケープゴートにしようとするメガ崎市長でアタリの養父・小林や、その補佐メイジャー・ドウモはヒトラーとアイヒマンみたいだ。
市長たちに追い詰められていくアタリや仲間たちだが、果たして犬たちを迫害から救うことが出来るのか?
このところ、日本のサブカルチャーを含めた文化や伝統にリスペクトや愛が感じられる洋画が幾つも公開されていて、日本人として誇らしいと感じると共に、我々自身がこれらの作品から今迄気付かなかった魅力や良さを教えられているような気がします。