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犬ヶ島のhiiのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.3
字幕版と吹き替え版を観ました。
監督ファン・犬好き視点の感想です。

ウェスアンダーソン監督作品が持つ特徴として、
幻想的な色使い・キャラの心情、キャラの心情や布線を自然に示唆するカメラワーク・時代背景やルーツを踏まえた美術…
など様々な観点からデザインされ尽くした画面構成が一つ挙げられると思いますが、
今回も期待して大正解でした😭🙏

わんこたちがテンポの良くセリフを掛け合うシーンは痛快で、くるくる変わる表情や動きがとっても愛らしい!
見てて飽きませんでした。(ウェスらしい楽しませ方ですよね)
わんこといえどみんないろんな過去を抱えてて、気づいたらめちゃくちゃ感情移入してしまいます。

また今回は日本が舞台の作品ですが、制作の過程でかなりの勉強や観察、考察があったことを痛感せざるを得ません…。
個人的に圧倒されたのは大相撲の取り組みシーンで、作り込みが半端じゃない。

双方両手を置くまでの張り詰めた土俵の空気感、大きな体がぶつかり合う激しい取り組み、そして最後土俵に残った方の戦意をしずめて粛々と戻る礼儀のある振る舞い………
いつのまに夏場所に来たように感じてしまうほどのリアル感です。
本当に人形か?という表現力にも驚きですが、表現力の土台となる監督の観察力に脱帽しました。

これをストーリーに全く関係のないところで、ほんの一瞬しかださないところが粋なんですよね…。


さてストーリーですが、
政治的な面も、シンプルに犬と人間との絆を描く面もよかった。

シンプルがゆえに気付いたらめっちゃ泣かされてました。
(犬が出てくる系の実写映画の予告版だけで泣いてしまうタイプのわたしは後半泣きっぱなしだった。)


そして日本語と英語の使い分けることでおもしろいギミックになっていると感じました。

字幕版(音声オリジナル)では、
犬は英語、人間は日本語で話すのですが、日本語訳が必要な場面では日本語のセリフに英訳が重なります。
しかし、主人公のアタリくんが犬たちの前でボソボソ喋るだけのシーンには英訳は音声でも字幕でもつきません。

つまり、日本語がわかる人にだけアタリくんが何を言っているか伝わる…
また、日本語がわからない人にはアタリくんの言っていることがわからないがゆえに、より犬の目線で伝わることがある…。

そんなことをもし監督が考えているならとてもおもしろいことをする人だなあと思います。


そして今回は、字幕版と吹き替え版ではスクリーンサイズが違うとのこと!
吹き替え版ではスコープサイズ(オリジナル)で、字幕版では監督の意向でビスタサイズ、オリジナルより小さいサイズなんです…。

またウェスアンダーソン監督作品ではよくある、キャラクターがモゴモゴと相談するシーンですが、
吹き替え版だと何を話してるかわかってさらに楽しいです…。(だいたいしょうもないことモゴモゴいっててかわいいんですよね…。)

そして日本語吹き替え版の声優さんもとても素敵な演技をされていました。
字幕版と吹き替え版、見比べるのもとても楽しめましたので、
ファンの方は是非比較してみてください。
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