伊達巻

軍旗はためく下にの伊達巻のレビュー・感想・評価

軍旗はためく下に(1972年製作の映画)
5.0
「26年間、ずっとあなたが必要だった」
今日という日にこの映画を観ることができたのは本当に良かった。とてもじゃないが星5では足りない、僕にとっての戦争映画ベスト。身動きひとつできなかった、ここまで100分が長く感じたのはかつてないだろうし、ここまで濃密で心身が食われた感覚を得た100分も無い。二本立てで先に見た『日本のいちばん長い日』('67)と続けて観たのも良かった。ナショナリズムが爆発していた前作、そして今作も「天皇といっしょに花を手向けてやりたい」と願って愛する人が死んだ理由とその様を知りたいと行動し続けるトガシ氏をみて、あぁ結局は「日本人」として生きることが求められるのかと少し辛くもなったが、いい意味で裏切られる。軽いことを言うとサスペンスみたいな要素のある脚本も秀逸で、全くもって観てて飽きない。だがそんなことはさておきとにかく反戦映画としての圧倒的な熱量、そして確固たるメッセージ。歴史は生きている。惨憺たる過去を覆い隠すように「キレイゴト」で埋め尽くされていく現代社会でも、全てを隠すことはできない。なぜなら歴史は人々の心の中にこそ生き続けているからで、そのことを説教がましくなることなく痛烈に描き出した本作はこの先も永遠と観られ続けていくんだろうし、そうであってほしい。どの時代においても決して色褪せない強烈な想いが作品全体に迸っている。どこのシーンをとっても印象深く、やがて全ての「事実」がトガシ氏の「魂」に集約されてゆくラストシーンは涙が止まらない、今の日本とも重なる部分ばかりで怒りも募る。違和感を覚えているのは僕だけではないはずだと、この映画を思い出せば信じることができるような気がした。
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