けまろう

夜明けの祈りのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

夜明けの祈り(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

『夜明けの祈り』鑑賞。友人から勧められたが未鑑賞だったのでリバイバル上映で漸く鑑賞。とても美しい映画だった。
舞台は第二次世界大戦後のポーランド。戦争で傷ついた人々の治療に当たる赤十字所属のマチルドが、ソ連兵に強姦され妊娠したシスターたちを密かに救う物語。男性悪が女性たちの視線から克明に描かれている。男たちに無理やり手篭めにされ、望まない妊娠をしたシスターたちは、自らの子たちとどう向き合うのかが、本作のみどころの一つ。自分を襲った憎むべき相手との子供を果たして愛せるのか。修道院長は、シスターたちの尊厳を守るために、この「身ごもった事実そのもの」を闇に葬ろうとし、あるシスターの赤子を外に放置するなど、苛烈な行為にも及んでしまう。しかし、そうした院長の想いとは裏腹に、徐々に母性に目覚めていくシスターたち。最終的に、憎むべき相手との子供であっても愛情をもって育てようと決意する。地元の孤児院含めて育てるというマチルドの機転で、辱められた事実も多少誤魔化すことができた。(のか?)一見未熟そうに見えるシスターたちが、本当の意味での聖母に近づく(成長する)ように見える。
特筆すべきは画面のこだわりだ。映画は終始暗いシーンが続く。特に修道院はシスターたちの暗い想いが画面にも反映されており、窓から入る外光のみが僅かな希望を暗示させるかのような差し込む。これが非常に印象的に繰り返され、観客は今か今かと物語の「夜明け」を期待することになる。そして、最後に訪れる物語の「夜明け」は、明るい昼の陽光が修道院の中庭をいっぱいに満たし、シスターたちの笑顔とともに終わりを告げるのだ。個人的にとても良い邦題だと思う。
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