殺人事件の前科がある三隅という男が新たな殺人事件を犯し、その事件の国選弁護人として三隅を弁護する事になったクールな敏腕弁護士の重盛。
真実が重要では無く、事実が重要であるという信念の持ち主である重盛は犯行を既に自供している三隅の弁護に初めは余り興味が持てなかったが、三隅との面会を繰り返して行くうちに違和感を覚え始める。二転三転する三隅の供述、金目当てだとは考えにくい動機、真面目な人柄、三隅は本当に殺人を犯したのか？犯したとしてもその動機は何か？そもそも前科の殺人事件も三隅が私利私欲の為に犯した罪だったのか？三隅に翻弄されながら重盛が辿り着いた真実は本当に正しかったのだろうか？
この作品には正確な真実は描かれていない。あくまでも重盛の推測であり、三隅の供述でしかない。真実は観る者に委ねられている。観る者の解釈により真実は歪められていくのでとても難しい作品だなと感じる。
真実に立ち向かおうとする被害者の娘紗江、真実から目を背けようとする被害者の妻美津江、真実を知りたいと思い始める重盛、そして真実を隠蔽したいと願う三隅ー
真意では無かったにせよ三度目の殺人に加担してしまった重盛の後悔と、これから新たな十字架を背負い生き続けなければならない紗江の絶望が観る者の心を覆い尽くす。
