イトウモ

三度目の殺人のイトウモのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.2
是枝が今まで積み上げてきた血縁のない家族のモチーフは、個人が抱える父子関係の欠落感とそれを埋めようとして共感し、同化し、撞着することでできる危うい人間関係のドラマに転生する。正義や真理の追求は、ナルシスティックな自己実現と表裏一体。
ここには3つのスクリーンが登場する。面会室のガラスで弁護士と容疑者はお互いを誤認し、弁護士事務所の擦りガラスが中にいる人間を匿名化し、フラッシュバックに登場する北海道の雪原で役所、福山、広瀬の役が互いを誤認して疑似家族を作る。
結末は意志の敗北とも読めるが、情に流されそうになった個人をシステムが守ったとも取れる。盲象だ。役所と福山が互いを触れ合うことを妨げた面会室のガラスが二人をナルキッソス的な溺死から守ったか。法廷で福山に握手を求める役所に実は事態の主導権があったようにも見える