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ヒトラーに屈しなかった国王のluのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

1939年9月1日
ドイツは東方へ生存圏を拡大するために、ヴェルサイユ条約で失ったドイツ領の回復を大義名分とし、ポーランドに砲撃を開始。これが第二次世界大戦の始まり。

1939年9月10日
ドイツ軍はポーランド主力を破り、わずか1ヶ月でポーランド領占領に成功。

1940年4月9日
ドイツ軍が、英仏からの防衛としての介入を理由にノルウェーへ侵攻を開始。

(世界史の窓より抜粋要約)

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本作は上記の4月9日からの数日間が舞台です。
ノルウェーの国王ホーコン7世は、ドイツから降伏を迫られます。

ヒトラーは国王に直接交渉することをドイツ公使(ブロイアー)に命じ、その密談は執り行われますが、これはホーコン7世にとって信念に反することでした。
ノルウェーは、何よりも国民の声が重視されるべきである民主主義国家です。
そのため彼には、国王が政治に介入してはならないという思いが強くありました。
そして、ドイツからの要求には、クーデターを起こして首相を名乗ったクヴィスリングを認めることが含まれていました。
国王としては、民心を得ていない者を任命することはできません。
しかし、降伏しなければ多くの犠牲が払われることも容易に想像できました。
国王は、兄であるデンマークの国王が降伏したことも耳にし、悩みます。

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結局、彼はナチスドイツに抵抗することを決めました。ホーコン7世や政府の閣僚はイギリスに亡命することになりますが、国王はレジスタンスを鼓舞するなど、ドイツに抵抗し続け、「ヒトラーに屈しなかった王」として尊敬されているそうです。

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ちなみに、あるサイトのインタビューで監督が製作のきっかけとして以下の3つを理由に挙げています。
・ドイツのノルウェー侵攻を経験した世代が亡くなる前に、この物語を映画化したかった
・世の中に知られていない物語を語りたかった
・今日、意義あるものをつくりたかった。つまり、国ではなく、自分のことばかり考えている世界のリーダーたちが多いことに対して、自分を犠牲にすることを厭わない国のリーダーを思い出させてくれるような意義あるものを描きたかった。

またインタビューでは、ドイツ人の中には、ブロイアー公使のようなナチスではなかったリーダーがいたことも知ってほしいと述べています。

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インタビューの回答を読むと、邦題で強調されているような、"ナチドイツへの抵抗"より"国のリーダー像"を主題に置いているような気がします。邦題ではそれは伝わりにくいと思いますが、翻訳者がより"ナチスへの抵抗"に注目したのだと考えると、その時の日本の関心ごとはそっちだったのかなとか勘繰っています。

インタビューを読むまでは、本作は一種のプロパガンダ映画ではないかと疑っていました。(そうかそうではないかはおいといて)
第二次世界大戦後は、ヨーロッパ諸国で戦時中のナチドイツへのレジスタンスが注目されたのかなと思っているからです。(まだ勉強中なので真偽のほどは結論づけられません)
本作もノルウェーのナチスへの抵抗にスポットライトを当てているとも言えます。
ただし、クーデターによって首相となったヴィドクン・クヴィスリングは反ユダヤ主義の親独者であり、彼の政権下でユダヤ人の迫害が支援されました。
監督がドイツ人だけれどもナチではなかったブロイアー公使を描いたように、
おそらくどの国においても、ナチドイツへの抵抗と協力双方の歴史があるのではないかと思います。
これが重要な気がしてます。
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