GT

ヒトラーに屈しなかった国王のGTのレビュー・感想・評価

3.8
第二次世界大戦中のノルウェーを描いた映画。
まず第一に、題材がマニアックというかあまり知られていない部分のため、これを映画にし、人々の間に広めたというだけでも非常に価値のある作品だろう。そもそもノルウェーの歴史以前に、ノルウェーの位置すら分からない人が多数だろうし。
ナチスに侵略されたノルウェー、「条件を飲めばこれ以上の侵略はやめる」、どうする国王!?な内容。邦題がとても良くない。そもそもヒトラーはほぼ関係ないし、「屈しない」のは一時的で結局降伏はしている。原題を訳せば「王の選択」だが、こっちの方がはるかに映画に合っている。
映画としては派手さはなく、淡々としている。悪く言えば地味。戦闘や派手な爆撃シーンなどはあまりなく、ドイツ軍に追われて逃走する王やドイツ側の使節との交渉が静かに描かれる。
ノルウェー国王ホーコン7世が英雄かと言われると、首を捻らざるを得ない。息子から「父さんのような王にはなりたくない」と言われてしまう通り、どちらかというと事なかれ主義というか日和見主義的なところがある。そんな彼が国政に介入してでもナチスと戦うことを決意するシーンは熱いといえば熱いが、その描写はやっぱり派手さはない。この映画のもう一人の主役はドイツ公使のブロイアーだろう。侵略という事が内心分かっていながらも立場上業務を遂行しなければいけない彼の心境は、ホーコンと同じくらいかあるいはそれ以上ともいうべきだ。
最後、国王がドイツと戦うことを決め、さあ、これから戦いだ!というところでこの映画は終了…というか3日で降伏してしまう。これはノルウェーの国力を考えればしょうがないことだが、なんとも呆気ないというか、現実はそう上手くはいかないんだなぁ、と思い知らされる感じ。勉強にはなるが、映画の題材としては若干弱い感が否めない。まぁ、大スペクタクルを狙って作ったわけではないことは、その暗い作風を見ればわかる事だが。そう言う意味でも、この邦題は失敗だ。
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