親子喧嘩→親元を離れるというプロットは『長い見送り』に似ている。
中盤に「ロシア正教の結婚式が長すぎてなかなか終わらないギャグ」が入るのだが、ほんとに終わらず地獄を味わった。。。(70分くらいある)

とは言え所々魅力的な運動があるので捨てがたい。特に唐突に挿入されるテレビのバレエ影像や結婚式に乱入するベールをまとった女の寝そべりながらの脚蹴りなど。

また喧嘩する親子のみ目に光を入れない演出が印象的。二人とも(というか家族全員)眼鏡をしており、表情が読めない。
しかし、二人がそれぞれ豚に話しかけるシーンではキッチリ目に光が入っているのだ。

食卓での親子の口論と正教会の結婚式、二つの「儀礼」をチェーホフの短編から継ぎ合わせ、前者をプロローグ／エピローグにして後者の長大な挙式を挟む構造。雑音と静寂、金と権威と信仰が絡み合う場で、俗悪と虚栄が露出する。

食卓場面は台詞の反復が合唱のように蓄積し、家父長制の暴力と金の支配を音響で体感させる。挙式はほぼ実時間で進み、形だけの敬虔さと倦怠がじわじわ膨張。過剰で仮面劇めいた演技と群衆の配置が、笑いと不快のあわいを往復させていた。

家庭では言葉が空転し、教会では聖の演出が空洞化する。若者の感受性が押し潰される空気まで可視化される儀礼解体映画。

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