ベルリン、パリ、ニューヨーク。それぞれの街に夏は必ず訪れる。生命力を放つ木々の葉、行き交う人々の笑顔、光の目映さや熱を帯びた空気。それらはすこしずつ異なっても美しい季節であることに違いはないはずなのに、夏の無邪気な過ごし方をもう思い出せない。
立ち直れないと思うほどの辛さを、ぽっかりできた心の空白を、どれほどの時間があれば、どれほどの愛があれば埋めることができるのか。喪失と再生という大仰で重苦しくなりがちなテーマを、ていねいな演出でナチュラルに印象的に描いた監督の絶妙なバランス感覚とセンスが好きだ。悲しみをいっぱいに湛えながらこぼれ落ちることはない、静かな美しい映画だった。ラストシーンがいつまでも胸に刻まれている。
『アマンダ』が公開されたら是非観たいと思う。