ネネ

肉体と火山のネネのレビュー・感想・評価

肉体と火山(2015年製作の映画)
4.6
第6回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルにて鑑賞。
少女の孤独や悲しみを爽やかに表現した美しい作品でした。

愛する父親は娘の病に怯え、悲しみに暮れていて、現実の娘に目を向ける余裕を持たず、そのせいで少女は毎日、同じ服を身に纏い、背負っている鞄のフックも壊れたままになっている。
彼女の救いは、幼い頃、光の降り注ぐ墓地を走り回った思い出にしかなかった。
食事シーンが何度も出てくるのに、遊び半分でつつきまわすだけで、彼女の食は進まない。
生きることに消極的になっている諦めの日々を感じ取りました。

悪意なく残酷に、心臓が足りないと告げた屠殺場の男性が、「お母さんに似てきたね」と微笑みかける。
その次の場面では、建物の外で苦しげに息を乱す彼女の姿が。
心臓に負担をかけてはいけない病の彼女が突然苦しみだしたのは、直前に興奮したせいでしょうか。
もしかしたら彼女の母親も、彼女と同じ心臓の病で亡くなったのかもしれません。

そんな日常が、突然現れた臨時教師によって変化し始める。
退屈しのぎで書いていた落書きに、臨時教師は目的を与えてくれた。
「火山の絵を描いてくれないか?」と。
活火山のドクドクとした動きは、活動する心臓のイメージに繋がる。

少女は火山のように燃える心臓の鼓動を夢見始める。
ただの肉の塊ではなく、息づく心臓を。
たとえば水中の中、苦しくなるほど息を止めて潜り続けたら?
そうして少女がついに、夢をかなえるラストシーンへ辿り着く。

20分は短すぎると感じるほど、好きな雰囲気の映画でした。
この監督の映画、もっと見てみたいと思いました。
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