ネネ

ザ・コンサルタントのネネのレビュー・感想・評価

ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)
5.0
最近、映画運がとても良くて。
星5がどんどん増えていくので、うれしいかぎりです。

***

ーー発砲音。
そして路上に倒れる男たち。
「まずい、救急車を呼べ!」
誰かが叫んでいる。
通り沿いの古びた建物の中に入ると、また新たな死体が転がっていた。
のっけから、ずいぶん人が死ぬなぁと思いつつ、息を詰めて状況を見守る。
そこはとある一味のアジトだった。
上の階から、声が聞こえる。
怯えた命乞いの声だ。
すがるように慈悲を求めているが……。銃声のあとは、何も聞こえなくなった。

人殺しが人を殺していく物語だと思っていた。
でもそれは、この映画の本質とは言えない。
そしてコンサルタントの物語、ではあるけれど……それだけでもない。

ものすごく魅力的な映画で、私は文句なしに星5評価をつけた。
ただどこがいいかを説明するのが、とても難しい。

ひとつわかっているのは、この映画からは不器用で素朴な優しさを感じるということ。
後半、怒涛のように始まる伏線回収の中、最後にとても心温まる驚きが待っていた。
差し出された手をずっと大切にするーー、殺し合う物語の核に、まさかこんなメッセージが潜んでいたなんて……。意外性にめっぽう弱いのだ。

そして、主人公自身の優しさ。
会計士である主人公クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)は、ある年老いた夫婦から、税金の件で相談を受けていた。
人の良さそうな夫婦の話を聞きながら、ウルフの目は夫人が首につけている手作りのネックレスに注がれている。
興味を持ってくれたのかと、婦人は喜ぶがウルフの返事はびっくりするほどそっけない。
「興味は全然ありません」

ウルフは他者とコミュニケーションをうまく取ることができない。
少年時代からずっと、自閉症という問題を抱えているのだった。
けれど彼の中には、ぎこちない優しさが存在していた。

たとえばアクセサリーが手作りだということを利用して、夫婦が少しでも税金を減らせるように、知恵を貸す場面。
「アクセサリーを作っているのは家で? 作業スペースはどのくらいの広さ?」「20……」
答えかけた依頼主に対して、違う違う。
顔つきを変えて訴えたあと、さり気なく指で上空を指してみせる。
「……30?」
それでいいというような表情を、ほんの少しだけ浮かべる。
老夫婦は税金の支払い金額が減ったため、ホッとしながら帰っていった。
言葉が不器用でも、彼はいい人なんだということが、ちゃんと仕草から伝わってきた。
この主人公を好きになった瞬間だ。

結局、振り返ってみると、多分すごく変な映画だった。
だから何度も見て、もっと掘り下げてみたくなる。
ネネ

ネネ