ネネ

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたちのネネのレビュー・感想・評価

3.4
冒頭。
フロリダの澄んだ青空が映し出されて驚いた。
この健全な色の中には、ティム・バートンの気配がない。
どうしたのだろうと思っていると、ドラッグストアでバイトをする主人公ジェイク(エイサ・バターフィールド)が登場する。
売り出し中のオムツを、せっせと積み上げる作業。
うんざりする日常を生きる少年だと、すぐにわかる。
しかも、たまたま居合わせた同級生たちの悪ふざけに巻き込まれ、オムツタワーは一瞬で崩壊。
この世界でジェイクは、あまりうまく生きられていない。

ティム・バートン色になるのは、ジェイクがおじいちゃんに教わったミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)と子供たちの家を探すため、ケインホルム島を目指し、海に出てから。
曇り空の下の船旅、どんよりとした空気、ああ、これこれとなる。
晴れ渡るフロリダの空より、陰気な曇り空のほうが、ずっと居心地がいい。
陰の世界を魅力的に見せる手腕は、さすがティム・バートン。

そしてようやく、違和感を抱いた冒頭の映像の理由にも気づけた。
この映画におけるフロリダは、魅力のない借りの住処だ。
これから目指す場所こそが、ジェイクの人生にとって本当の居場所になる。
確かにフロリダの晴れた空は、なんだかやけに作り物めいて見えた。

ずっと「行きて帰りし物語」という型にたいして、複雑な想いがあった。
主人公はどうしていつも、始まりの場所へ帰ってこなくてはいけないのか。
生きる場所ぐらい自由に決めさせてあげられないのかな。
そんなことをよく考える。

だから、本作の最後にジェイクが見せた頑張りと、それを叶えさせたストーリーにハッとなった。
安心できる場所を求めてさまよう旅を続ける行為を、許容する物語ってやっぱり必要だよなぁと思う。
逃げちゃだめとか、向き合うことを強要して、社会が子供を追い詰めずに済むように。
ネネ

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