マツタヤ

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのマツタヤのレビュー・感想・評価

4.0
とある雑誌読んでたら気になる事が書いてあって、ギリシャ神話の時代から音楽とはディオニュソス的なるものとアポロン的なるものとの2種類に分けられるらしい。前者は陶酔的で主観的、後者は静的で調和的であるとのこと。例えばポップ音楽などがディオニュソス的で、アポロン的なる音楽はミニマルミュージックやアンビエントなどになると。

映画がもし同じような話しで例える事ができるならこの映画はアポロン的で、アンビエントなる静謐さが漂う詩的で穏やかな映画。

静かな田舎に住むとある夫婦の夫が交通事故で亡くなり幽霊となって浦飯幽助的に奥さんのもとにそっと登場する話し。

きーっと何年たってもこうして変わらぬ気持ちで〜過ごして行けるのね♪なドリカム未来予想図IIのよな、ずっと一緒にいる、いたいことを高らかに伝えたいというよりも、
この映画の中で一番長いセリフを喋る預言者役で登場したウィルオールダムことボニープリンスビリーがI see a darknessで歌った
「闇が見える闇が見える闇が見える、私がどれだけあなたを愛しているか知っている?それがこの闇から救ってくれるということを」
というように密かな思いをひっそりと歌い上げる歌詞の方がぴったりとくる感じな映画。

そんでウィルオールダム本人が登場した事があまりにも示唆的で、このカルト的なフォーク歌手が語る内容がまさしくフォーク、伝承的で主人公のゴーストの境遇と重なる。

フォークは祖国の伝統歌として歌い継がれるもの。何十年何百年と時代のうねりのなかでも地域的、人種的な要素が混ざり合い、庶民の人生の悲喜こもごもな内容が世代の歌うたいたちに受け継がれる。歌の中の誰かの人生を生き、歌い継ぐことで、そこに宿った情感を次の世代に受け渡す事ができる。

この映画に登場するゴーストたちはそんなフォークのような世界観に寄り添うような哀愁ただようキャラクター達だった。
こんな詩的なゴーストだったら良いな👻

間違っても90年代のホラー漫画アウターゾーンで語られたような、なんか臭いなあっていう異臭がした時は、実はすぐそばに目には見えない死んだ人たちの腐乱した体をした幽霊がいるんだっていうありがたくない話しよりも断然良い💀
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