のすけ

羅生門ののすけのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.6
侍が1人森?の中で死んでいて事件がこの物語のきっかけ

複数人の人物が証言するが、その供述内容が異なる

それぞれが嘘をついている
その嘘は決して自分の罪を免れるためだけのものではない
それがまた面白いところ
自分のエゴ、プライドのために真実を語れない様子があまりにも人間らしい
しかも、証人の中には殺された当人の侍もいる(降霊によって証言)
その死んだ侍ですら、真実をそのまま語ることはない

多襄丸は自分の男性性を保つため

侍の嫁は夫に誠実で自分の死をも厭わない素晴らしい女像を保つため

侍は自分が嫁を奪われた無力な男であることを否定して、最低な女に騙されていた哀れな男であり、自ら自分の命を絶った高貴な精神を持っていたことを示すため

杣売りは最初からこの事件に関わっていない身分だから嘘の話をすることなく、ただ見たままを話せばよかったのに、短刀を事故現場から盗んだだめ、話さなかった

人間は虚飾なしには自分自身について話せない

同じ出来事を複数の登場人物の視点から描いたのはこの映画が初らしい

この映画を機に似たような技法が取られ出した

さすが黒澤明
のすけ

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