おーもり

SING/シング:ネクストステージのおーもりのレビュー・感想・評価

3.9
めっちゃくちゃめっちゃくちゃ良かった 最高
吹き替え版でみましたが、歌唱力ファーストでのキャスティングで信頼感が厚い。
この作品でいちばん大切なものは何なのか?をよくよく読み解いて尽力した日本語版制作スタッフの皆様に大感謝。
ラストのステージでは全部に歌詞字幕も出してくれて最高。
前にも言ったが、歌がメインの音楽映画は、字幕によって歌詞の意味をより噛み締められるから効果的だ。
日本語版では字幕ないかなと思っていたが、ラストの大見せ場ではきっちり用意してくれていた点、本当に作品を通じて何を伝えたいのだろうかを考え抜いてくれた痕跡を感じてそこにも胸が熱くなる。

話の発端としては、毎度ながらムーンことコアラさんの本当どうしようも無い勢いデマカセ。
「あの引退スターを連れてこれる訳ないよなぁ?」
『・・きらぁ・・』
「あぁん?」
『出来らぁ!!!!ステージに出演させてみせらぁ!!』
見ている人だれしも(おいおいまたかよ)という呆れと共に始まってしまう。

前作で自分らの輝けるステージを作り上げたという成功体験の快感を知ってしまった狂人の、恐ろしい渇望による地獄のデスマーチの始まりだ。
でもまぁ出演陣も夢の大舞台、新たなチャレンジにドキワクしているので全体的にムーンに対して肯定的で皆モチベも高い。
目指すは最高のステージというところが一致しているから何とか空中分解せずに推進力は無くなってはいないのが救い。
ただ、それぞれが新たな課題に直面させられる。これを乗り越えないと"次なる舞台"には上がれない。

そこで対峙するやつらが、どいつもこいつも最近エンタメ業界でのさばっている醜悪な存在の具現化であからさまだ。
あのオーディション番組で辛辣評価が売りのあの人似の狼に、セッションでみた某・K・シモンズのファッ○ン・テンポ!!な、お猿さん。
中には、その性格は悪意から来るものではないから、同じ志をもって舞台を作り上げる仲間として迎える人たちもいる。
でもあのコアラも、配役、演出、プロデュースの才はあれど邪悪な業界人であることには変わらない。
ラストであいつにだけ制裁が何も無いのはちょっと納得できない。お前のせいでとんでもない投資が消えたんだぞ。何年か一緒に監獄で頭冷やせ。

ところで日本語版の良さの話に戻ると、アイナ・ジ・エンドさん、初めて知ったけど素の声の演技も歌も最高!間違いなく今作日本語版の MVP。
吹き替えネタのコアラ・ジ・エンドってそういう事ねって後から分かった。
ハスキーな声が本当にキュートで無邪気で愛らしい。例えるならピカチューがピカピカ言っていない時に発する「キュゥウ~」とか「チャァ~」とかいう悶えの可愛さに近い(伝われ)

伝説のロック・ミュージシャン、クレイを演じた稲葉浩志さん
ライオンという大柄な見た目に反した、少し高い声と繊細な感情を込めた演技も良かったよ。そしてなにより、ラストの歌唱の圧巻なことよ。
ここがイマイチだったら、この作品なにもかも台無しになってしまう。その重責を吹き飛ばす最高のステージだった。
クレイの描写自体もすごく丁寧でいい。孤独に物静かな隠居生活に垣間見える悲しみ。
クローゼットに仕舞われた車椅子や、ロックスターの彼のキャラからは想像しにくい花々と、それを世話する姿。多くは語らず、ふと見せる表情や幻影で彼が救われる描写を描いていて素晴らしかった。

不満点があるとすれば、spotifyなどで配信されているサントラ。日本語版の収録が中途半端。
前作のもそうだったが、謎のある曲ない曲あって残念。本編見ろってことなのか・・・・。