komachi

彼女がその名を知らない鳥たちのkomachiのレビュー・感想・評価

4.5
原作を読んでから観ました。
阿部サダヲの陣治は見た目や仕草は汚らしいけど、阿部サダヲの誠実さなのか嫌な感じは全くせず、強い父性を感じるものになっていた。
映画だけ見たら、陣治の十和子に対する性的描写はあるものの、それを除けば身なり構わず出来損ないだけど家族を必死に守ろうとする父親とニートの娘のような感じに見えた。
小説の方の陣治はもっとクドく、性格的にも粘着質で十和子にまとわりついて離れない、もっと嫌〜な汚らしさがあってそれがクライマックスに繋がったけど、映画の陣治はただひたすら純真でとても綺麗だった。
私が阿部サダヲが好きだからそう見えてしまったのだろうか?
それとも結末を知ってるから初めからそう見えてしまったのかも知れません。
ポスターとか、十和子を見つめる目とか、もう純粋な愛に溢れてる顔してるんだもん。最後の回想シーンだって、的はずれてるものの、ただの純粋で綺麗な思い出ばかりだし。
でもせっかっく阿部さんなんだから、もっと粘着質で陰気で十和子に執着する陣治を描いて欲しかったかな〜。

蒼井優の十和子は良かった。
地がそうなのか?と思えるくらい十和子だった。
黒崎は怖かった。あんなにかっこいい竹内でも狂気を見せると全然かっこよくなく見えた。さすが。
水島の松坂桃李もこんなイケメンでも欲望向きだしの、十和子と繋がろうとするあの瞬間はものっすごい気持ち悪さを感じて、イケメンのそんな姿見たくなくて思わず目を背けた。さすが。
水島の描写は全体的に良かったな〜。

陣治の描写は少し物足りないと思ったけど、映画を見て、なぜ最後陣治がああしたのかわかった気がした。
小説を読んだときは、ここまでしたなら、ここまで十和子を想ってるなら、この後も十和子を支えてあげたら良いのに、これから幸せになれるかもしれないのにって思った。
けど映画を見たら、そうじゃない、陣治にはこれ以上は受け止めきれなかったんだってわかった。
全てを抱えて生きていけるほど強くない。
今までは十和子を真相から守るためだけに生きてきたけど、わかってしまった以上抱えきれない、自分でも自分自信の力量や生活や生きるということを分かっていたんだなって思った。
十和子が居なければその前に死んでいた人間だったのかもしれない。
そうだ、幼少期の描写はそういう人間を示していた。
と分からせてくれた。
そしてまた小説を読む。

小説を全部映画にするには時間が足りないけど、小説と映画両方見てそれを一つの作品とすると、本当にとても深くて素晴らしかった。
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