Panierz

テオレマのPanierzのレビュー・感想・評価

テオレマ(1968年製作の映画)
5.0
様式化したブルジョワジーの家庭は芝居装置と同期し、やがて空虚なシステムのみが機能するゼンマイ仕掛けの現実を創り出す。神的な魅力を放つ外部によってその空洞は照射され、それは神話的な語りとともに自己省察へと導く。しかしシステム化したブルジョワジーは、神的な存在に近づこうとしても儀礼的な演技や表層的な芸術による形だけの行動しかできない。唯一、労働者階級であるハウスメイドだけが信仰心を持った結果、奇跡を起こし聖人になることができた。このようにまとめると、ブルジョワや資本主義システムへの批判と神への信仰を称揚する敬虔なキリスト映画の構造を看取できるが、パゾリーニはそう簡単でもない。神を美しく描くこともあれば、醜く描き瀆聖するようなこともしてきた作家だ。実際にパゾリーニが神についてどう考えていたかを探求するには、この作品は観念的すぎる気もするが、その深淵こそがパゾリーニの魅力なのかもしれない。
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