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メランコリアのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

メランコリア(2008年製作の映画)
3.0
【チャリティシスター対AV監督】
MUBIで意を決してラヴ・ディアス7時間半の作品『メランコリア』に挑戦してみた。

本作は3つのパートに分かれている
・チャリティシスター対AV監督(約3時間)
・アーティスト無双(約2時間半)
・軍人さん森を彷徨う(約2時間)

後半4時間半が要らないのではと思うくらいパートⅠ「チャリティシスター対AV監督」が面白かった。

ラヴ・ディアス映画といえば、毎回籠を持ったパン、バロット売りが現れる。今回は、恵まれない子どもの為に募金を募るシスターが登場。人気のない町を彷徨い「チャリティ フォー チルドレン」とたまに現れる人に募金をお願いする。しかし、人々はそれを無視するのだ。

哀しみに暮れ、トボトボと歩く女の前に綾野剛似の男が出現。「オラに元気を分けてくれ」とシスターに駆け寄る。余りに怪しいので、避ける。すると、「この世は地獄だな。はっはっは」と男は罵声を浴びせるのだ。

しかし、不運なことにシスターは男と再会してしまう。「俺っち、暗闇が好きなんだ。暗闇を前に皆平等になるからだ。」と女に気取って話しかけているとこれと鉢合わせしてしまう。シスターはその女から、募金をゲットする。すると、「オメェは何の為に募金をしている?」と男がシスターに圧迫面接を始めるのだ。

そして、男は、シスターが募金という本質を自分の中に持たずして、町を徘徊していることに漬け込み、自分の仕事であるAV撮影現場へ彼女を連れ込み、「ほれ見ろ、見るんだ!」とセクハラし始める。

ラース・フォン・トリアーさながらの鬼畜さの中に、世の中の欺瞞。表面的な信仰心の危うさを暴いていくラヴ・ディアスの演出、これがメチャクチャ面白かった。

もちろん、後半4時間半も見所十分。謎のアングラ音楽演奏シーンに、フィリピンのMAN WITH A MISSION(?)と思われるバンドと観客の騒乱ライブ、HP1の兵士が血を這い蹲りキノコを貪る、骸骨発掘といったユニークシーンが多く飽きない。

しかし、パートⅠが映画として完成されきっていたので、残りは要らないのではと感じた。確かに最後のセリフ「神はどこにでもいる」を説明するには必要なのかもしれないが。
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