ねこねここねこ

アフターマスのねこねここねこのネタバレレビュー・内容・結末

アフターマス(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

内容もわからないまま、とりあえずシュワちゃん出てるから録画したのに、シュワちゃんだからアクションかと思って消去しそうになったんだけど、途中からは引き込まれてしまった。

実際に2002年に起こったユーバーリンゲン空中衝突事故✈️を基に作られた作品らしい。Wikipediaで調べると、その前に日航機2機が同様の空中であわや衝突事故を起こしそうなニアミス事故があったらしい。その時の教訓が航空業界で活かされなかったのは残念。

機械はミスしないかもしれないけど故障することがあるし、人はミスする。どんなにベテランでも完全じゃない。
それが管制官のミスとなるとたったひとつとミスでも多くの人命がかかって来る。
そのひとつのミスで多くの人の運命も変わる。

ただ未曾有の大事故という割にデカデカとセンセーショナルに報道されている場面もほとんどないし、淡々と進みすぎていま重大事故感が乏しいのは残念💧
この事故で突然妻と妊娠中の娘を失い失意のどん底に落ちた男ローマン(アーノルド・シュワルツェネッガー)の悲しみと管制官ジェイク(スクート・マクネイリー)の苦悩を描くことで精一杯という感じなのと、ジェイクが世間から糾弾され、社会的制裁を受けていることを描いたから良いと思ったのかもしれない。また事故現場で無残な娘の遺体を抱きしめ悲しみにくれるローマンの姿や飛び散った真珠のネックレスを描いていたのも良いが、たった1〜2分でいいから世間でどう報道されたのか、事故の大きさ、深刻さを伝えるべきだったのではないかと思う。

また映画の中では航空会社の顧問弁護士はローマンに向けて合意書をポンと投げて寄越すなど失礼すぎる態度。まさか実際にはこんなことはなかっただろうが、訴訟社会ってひとことでも謝罪したら負けとかなんだろうか?
遺族に十分な金を支払うからいいだろって態度に驚く。しかもその額は妻と娘二人合わせても今の円換算で2300万程度でそんな尊大な態度を取られてもなぁ💢ひとこと謝罪すべきじゃないんだろうか?
まぁ日本みたいに何かあるとコメツキバッタみたいにペコペコし過ぎるのもどうかと思うが…。

妻と娘が写った写真を取り出して、謝罪を求めるローマン。補償の金額提示して訴訟を取り下げろと要求する会社。当然話は平行線。怒りと虚しさだけが残り、ローマンは事故の責任の所在を追求し、ひとりの管制官ジェイクにたどり着く。

ここでローマンは辛くてもしっかりメンタルケアを受け、愛する者を失った喪の作業をすべきだったと思う。でも人間ってそんなにうまくできないよね。ローマンもそれができず、身の置き所もなくして二人の眠る墓地🪦で眠る。辛い。これが実際に実話だからなおさら。

一方、生気をなくし顔面蒼白で自責の念に苦しむジェイク。カウンセリングを受けても苦しみから逃れられず、薬だけ欲しいと言い張り、服薬自殺しようとしてもできず、結局自分と家族の身の安全のために会社の勧めるように、名前も仕事も変えて妻子と別のところで新しい人生を歩み始める。
彼も世間の目に怯えて暮らしたはずだ。
今みたいにSNSが発達してたら顔写真とかばら撒かれていそうで怖い💦 どんなに便利そうなツールでもそれを使う側のモラルがなければただの凶器になり得る。

辛い事故から1年後、合同の追悼式では悲しみをなんとか乗り越えて生きているようにみえたローマン。そこで妻と親戚を失い一日中身の置き場がないと悲しみを訴えるアンドリューという男性。静かに励ますローマン。おそらくこのアンドリューの発した言葉こそ、ローマンの心の叫びなのだろう。朝起きてからずっとどこにも身の置きどころのない悲しみ。

事故のことを本に書いたライターの女性からジェイクの今の名前と住所などを聞き出したローマンはジェイクを訪ねる。「一度も誰からも謝罪の言葉を聞いてないんだ」と訴えるローマン。
一度はチャイムを鳴らしただけで立ち去ってしまったが、意を決して再度ジェイクを訪ね、ドアを開けたジェイクに妻と娘の写真を突きつける。そして謝罪を要求するが、タイミング悪く久々に妻子が遊びに来ていたため、ジェイクはローマンを追い返そうとする。

うーん、ここはなんかなぁ。
いきない写真突き付けて謝れって言うかな?そしてジェイクの方もそんなに冷たい態度で「警察呼ぶぞ」とか追い返そうとするかな。
極端すぎる演出が強引すぎて引いたよ。

それにしてもジェイク、ひとこと謝れなかったのかな。なんであんな強硬な態度なんだろう?
「妻と息子がいるから外で話そう」とかいくらでも対応できたのにね。
とは言え実際にこの殺人事件は起きてるから、こんなやりとりだったのかもしれないけど。 

そしてローマン、怒りがMAXに達してナイフで刺すにしても首⁉️頸動脈切ったらそりゃ死ぬよ。てかナイフ持って行ってたのー❓
実際にこの犯人は妻と子供をなくし、事件までのほとんどの日をそのお墓の前で過ごしていたというから、辛いよね。

シュワちゃんがアクション封印して苦悩する男性を演じている。久々に妻子と会えるからと鼻歌まじりにシャワー🚿浴びてる裸体。なんか筋肉たるんでてその辺のおじさん化してたね。シャワーキャップしてる姿が妙に笑えた😄
家の中を飾りつけ、花束💐持ってルンルンと空港へ〜からの地獄。

私たちはなんとなく明日は来ると、今日も家族は戻って来ると信じて生きているけど、本当はそんなことは約束されていないんだよね。

毎朝当たり前のように挨拶しあい、笑いあい、労わりあい、私が仕事が終わったよとLINEすると必ず「お疲れ様!」と返事してくれる夫が突然いなくなったら…。
生きては行くだろうけど、それこそ自分の半身をもぎ取られたような感覚だろうな。果てしなく長く暗いトンネルに放り込まれて、出口が、光が、どこにも見えないような。

ひとこと謝罪して欲しいと思うだろう。責める相手がいたら思い切り責めたい。
JR脱線事故の報道があった時、地震と違って責める相手がいるということ。この事件もそうだ。でも管制官1人を責めるのもまた違うと思う。

難しいね。

そしてラスト。ジェイクの息子のシーンは個人的には不要だと思うけど。
まぁ憎しみの連鎖というか、あの息子はそれをよくぞ断ち切ったねと褒めたい。
殺せるけど、殺さない。
そう、殺し合いしてちゃ誰も前に進めない。許せとは言えないけど、どうか前を向いて進んで欲しいと願うしかないよ。

この事故に関してはナショジオのドキュメンタリー「メーデー!航空機事故の真実と真相」でやってたらしいが、好きな番組でよく観てたのにこの回は見逃してしまった。またやってたら是非観たい。