回想シーンでご飯3杯いける

きみの鳥はうたえるの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)
3.5
原作未読。函館で暮らす男2人、女1人のアンバランスな共同生活。ストーリーは取り立てて大きな起伏が無いので、正直前半で脱落しそうになったのだが、時折、目が離せない会話や間が入ってくるから、結局、3人の行く末を、少し懐かしいものを見るような感覚でずっと眺めていた。

やはり何と言ってもメインの3人の人物描写が良い。僕(柄本佑)が冒頭で冷凍庫の扉を開けっ放しにする様子が彼の性格を上手く表現していて、しかもこのシーンは後半に向けた伏線にもなっている。

特に秀逸なのが石橋静河が演じる佐知子。何処にでもいそうな20代前半ぐらいの女性。ストーリー的に言えば、ただ単に惚れっぽい女でしかないのだけれど、しっかりした芯のようなものも感じさせて、とても魅力的な人物になっている。クラブでのダンスシーンが特に印象的だったので後から調べてみたら、コンテンポラリー・ダンサーとしても活動しているそうで、なるほど納得。

彼女は、石橋凌と原田美枝子の間に生まれたサラブレッドでもあるわけだけど、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の時と同じように、どちらかというと華のある感じではなく、あくまで一般的な都市生活者といった佇まいの人物がはまっているのが興味深い。今後も出演作が多数控えているようなので、活躍が楽しみだ。