しどけ梨太郎

大人のためのグリム童話 手をなくした少女のしどけ梨太郎のレビュー・感想・評価

4.0
表現方法がどれほど斬新であったり特徴的であったとしても表現として存在する限りはその方法だからこそ伝えられるものがなければ良い表現方法だとは言えない。この映画の場合は、木があるから掴むのではなく掴むから木があり、枝があるからそこに腰掛けるのではなく腰掛けるからそこに枝があり、といった風にとても主観的な世界を描き出すことにその独特な表現方法で成功している。そういうことを序盤でしっかりしておくことで、例えば手を切り落とすときの父親の姿がもはや人間ではなくてもそれが少女の受けた印象であるということがすんなりと理解できる。言うなれば、客観的であることをできるだけ廃し、印象だけで構成された主観的な世界を描くということを、描けるということをアニメーションに特有の力として提示している。その点でこの映画はすごい。
ただ音楽の不適合加減が凄まじかった。最後の曲の入りは良かったがそれ以外はあまりよろしくなかった。

最後に悪魔が「adieu」(à Dieu「神のみもとに」が語源)と言っているのがおもしろかった。あの3人は最後、神のもとに飛び立っていったんですね。

それにしても手を失くした少女が強すぎる。