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マザー!のP1島のレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
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少し内容に捻りを加えた聖書映画を作ったら意味不明と叩かれ、内容に忠実な聖書映画を作ったら今度は不快すぎると叩かれ……散々なアロノフスキー監督。

「不快すぎる」が故に本国で観客ウケ最低、ラジー賞にもノミネートされた上に、日本でも急遽劇場公開中止になってしまった(?)作品なので、どんなヤベーもんかと身構えてたら別にそんなでもない。結局、Red Letter Mediaの「お前ら大袈裟に騒ぎすぎだろ。ただの聖書映画だよ」という評が最も的を得ていた。

聖書の内容をほんの少しでも知っていれば、あの赤ん坊がロクな目に合わないのはすぐに分かるし、「父親」の不可解な行動も別にどこも"謎"ではなくなる。神が問題を全て解決してくれるなら、この世に苦しみなど存在しない。あの「父親」は頼れなくて当然。

「光あれ」ではじまる今作は冒頭から聖書映画であることは明白なのだが、終盤に至ってはもはやアレゴリーも放棄し、「父親」は神の象徴ではなく、神そのものとして描かれる。
《世界が、人類の歴史が、一つの家の中の出来事だとしたら?》というコンセプトも、冒頭では機能していても、終盤で家の中が比喩ではなく言葉どおり戦場と化すあたりから、アレゴリーを用いる意味が薄くなってくる。

まあ絵的には確かに「悪夢的」で面白いんですけどね。腐ってもそこはアロノフスキー。
ただ、意外性や内容の意味を深く考えさせられるようなところが全くなかったのが残念。本当に終始聖書の内容を家の中でやっているだけだし、最終的に提示される「神の意志を窺い知ることはできない。世界は残酷で、生まれてくる意味を考えることは虚しい」という命題は、どこも新しみを感じさせない。いや、そんなの当然でしょ?って話。

彼の作品の中では『ノア』に並ぶ微妙さですね。(ちなみに僕は『ノア』を意味不明な作品だとは思っていないし、ノアの取る行動もきちんと説明できると思っている)


アロノフスキー監督は、一回聖書から離れましょうよ。そんで今敏の『夢みる機械』に資金提供して。
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