inazuma

ハウス・ジャック・ビルトのinazumaのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
4.5
この夏開催されたトリアー祭(レトロスペクティブ&キングダムシリーズ一挙公開)で散々監督の手の平の上で転がされまくり、感情も脳みそもグラグラ揺さぶられ、最高潮に達したトリアー熱が冷め切らぬまま残暑を過ごしております🌞
我慢できずアマプラのレンタルで激グロと言われる未見の本作を鑑賞したところ、案の定、エラい目に遭いました😨
強迫性障害、カンヌ出禁事件、セクハラ告発…トリアーの中でぐつぐつ煮え立ったフラストレーションを「これでも喰らえ❗」と一気に放出させた必殺スーパー鬼畜ブラコメ映画。

本作はシリアルキラーであるジャックが、自身が殺人を行った12年間の中から無作為に選んだ"5つの出来事"を謎の老人に語るというあらすじ。物語の進行中に話し手の解説と聞き手のツッコミが実況みたいに合わさる構造は前作『ニンフォマニアック』やデビュー作『エレメント・オブ・クライム』でもやってますが、自分の気持ちを代弁してくれるのと、何より漫才みたいで楽しく興味が持続してとてもありがたい構造だと思います。ただ今回に関しては、肉体的にも精神的にも痛めつけられる上、最近苦手だと気付いた「人を殺してひと笑い系コメディ」の笑いの連続に萎えに萎えてしまってツッコミを聴いてる余裕はなく、ひたすらゲンナリ。ジャックがすごい潔癖だと分かるシーンはクスッとはきましたが、その後に起こることが痛すぎ酷すぎマジ勘弁だったため、クスッと笑いもすぐ忘れ、やっぱりゲンナリ。。

ただいつものトリアー作品とは異なり、良くも悪くも観やすい作品に仕上がってたとも思います。ジャックはトリアー自身であるという見方をすればとても楽しいのです。「"怒りん坊"はもう怒っていない」とか「男はいつも犯罪者、女はいつも被害者」とか、完全にトリアーの言葉。しかしジャックというキャラクターそのものにはまったく(当然)共感できないし、そそられない。ただただ残酷で、善悪の揺さぶりにかけられることもなかった。(ユマサーマンはイライラさせる女ですが殺そうとまでは絶対に思わない笑。車から降ろして置いてくぐらいでいいじゃない!)
このように一切ジャックに共感できず、彼を終始突き放すことができたのでとても観やすかったです。
うん、トリアー作品で味わいたい"嫌さ"はコレじゃない!犯行のシーンが嫌悪感MAXでマジでノレない!
…とか思ってたら、怒濤のエピローグからのスカッとしたエンディングに心打たれ大好きな作品になりました笑。
ジャックよ、お前マジで二度と戻ってくんな。。

ジャックの標的となる女優&子役陣はよく仕事引き受けましたね。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でセルマに寄り添う優しい看守ブレンダを演じたシオバン・ファロンが、今回はこんなことになるなんて…あんまりだ!こういうとこも意地悪なんだな~泣。ジャックを怪しむ表情は自然すぎて面白く、笑わせていただきました。
『ボス・オブ・イット・オール』でクールビューティー元妻を演じたソフィエ・グロベルが出てたことは、それ自体嬉しかったし役柄が全然違って新鮮でした。…この人への仕打ちが本当の本当に酷い……ピクニックのシーンは度が過ぎた残酷さでジャック(トリアー)のことが嫌いにならずにいられない。。ソフィエの怯え嘆く演技も上手すぎて、心の底から嫌いなシーンになりました。。
あの"怒りん坊"の笑顔も、、笑えなさすぎるがあまり、ちょっと笑ってしまった。。悟
あと初めて見た女優さんですがライリー・キーアもよく頑張りました。いちばんの激痛を味わった彼女の勇姿は忘れない。。

強烈な作品でした。この嫌な感じは是非映画館で味わいたかったな。。後悔。
本作の次作が『キングダム エクソダス〈脱出〉』という笑。監督、次は休憩として血が流れないコメディでも撮られてみては。。
inazuma

inazuma