しょーいち

ハウス・ジャック・ビルトのしょーいちのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
4.3
ラース・フォン・トリアー作品初鑑賞。
ジャックがサイコに目覚める瞬間からオチまでずっと不快で最悪すぎる映画。

ラース・フォン・トリアーはは人に不快感を植え付けるのが上手い。稚拙な表現ではなくて確実に刺しに来ている。ただジャックが自分の哲学に従って快楽的にやっているのがしっかりと描かれているから次の殺人衝動への伏線的な怖さみたいなに繋がってるのが凄いなと。邦画で『パズル』っていう映画があって、それはひたすら中学生が考えたような見てて不快なサイコ映画なんだけど全然浅くて普通に見てて苦痛。それとは違って身近にこんな人いたらやばいなって思わせる怖さ。『冷たい熱帯魚』とは構造も設定も違うけど似た怖さ。

ジャックの狂気性を増幅させてる表現として、冒頭からラストにかけてずっとジャックと老人が、ジャックの殺人についてお互いの芸術論を掲げながら語るシーンがある。ジャックは自分の殺人に美学を持たせて行動していて、特に建築への造詣が深い。建築の構造の話や影の付き方の話を自分の殺人衝動に照らし合わせて語る様はジャックの変態性を強調させていた。(というかラース・フォン・トリアーが変態)

最終的にジャックは「ハウス・ジャック・ビルト」を完成させて地獄へと向かっていくわけだけど、ここからは多分ジャックの頭の中の表現で、幼少期に見た草刈りの情景で涙するシーンや、ジャックと老人が「ダンテの小舟」と全く同じ構図でポージングしているシーンは呆れて笑ってしまうくらい自分の芸術に酔っている表現に見えて、ここまで振り切ったサイコ映画なら今までの胸クソ悪いシーン達も肯定せざるを得ない気持ちになっていた。変態映画の極みって感じだけど、見ていた時はあんなにもう二度と見たくないと思っていたのに今ではもう1回見てもいいかなって思ってるくらい。結果すごい映画だった。
しょーいち

しょーいち