おんどぅる

ハウス・ジャック・ビルトのおんどぅるのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
4.0
面白かった。
殺人鬼ジャックの思想や芸術観をヴァージとの対話を通して聴きながら、徐々に手慣れていく芸術活動を見る。
共感も納得もしないし、勿論好意など微塵も感じないけれど、他の国の人の話を聞いているような面白さがあった。「サイコパスってそういう風に考えてるんだ」という。
話の隅に世間並みの差別観念も伺えて、「同じ人間」という感じがするのも不思議な感覚。

ただ、最後の死後の世界だけはありきたりでつまらない。
ジャックの精神世界なのか、監督の死生観なのかわからないが… キリスト教の枠を外れない「よくあるあの世」って感じ。
ジャックにとって地獄は熱いマグマなのか?毎日通っていた、あの冷凍庫のように寒い場所なんじゃないのかな…

ドキュメンタリーのようなカメラワークとカット割りが緊張感があって面白い。
実在の作家や人物を引き合いに出し、過去の映像を交えて話すことで「ジャック」の実在性を高めている。
ジャックはフィクションのキャラクターだけれども、このような「人間の形をした悪意」は存在するのだろうと確信できる。

なんとなく、時計仕掛けのオレンジが見たくなった。

本作品の内容と関係ないが、カエルか何かの生物が繁殖し過ぎると、同族を殺し始める大きな個体が現れるという話を思い出した。
種の数が適正になるとそのまま死んでしまうという。
つまり人間の中からたまに現れるサイコパスも、同じ仕組みで生まれてるのではないかな。
そう考えると、人間も他の生き物と何も変わらない「ただの動物」と思えて面白い。
ジャックもただの「変異体」なだけ、という。
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