すね

ハウス・ジャック・ビルトのすねのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
5.0
ラース・フォン・トリアー監督ありがとう、この映画作ってくれてありがとう、最高だ。本当に最高だ。わたし、こういうの観たかった。わたしが今必要とする映画だった。
ブレない作家性だね、個性的だよ。苦しいとか、痛いとか、真っ暗よ、怖くて仕方がないんだよ。闇が溢れ出しちゃっているんだ、画面から。
それをただただわたしは観ているしかなくて、どうしたらいいんだって思うんだけどこれもまた考え方を変えてみると面白い。
ちょっと待て、わかったから!いいよいいよどんどんぶつけてこいよ、受け止めるよ!理解はできないかもしれないけど大丈夫、理解してみようとは思う。
なぁ、これ、笑っていいんだよな?よし、笑うぞ。よし、こい!
そう思ったらもう、本当なんでも大丈夫。
ここに出てくる主人公、めちゃくちゃ人を殺す。何人も何人も。
すごい数、60人くらい殺したって後半カミングアウトするけど、それだって本当の数かわからない、でもそのくらい本当、めちゃくちゃ人殺す。
殺し方もエグい。グロい。
観てて気分良くなるわけがない、そんなのずっと観てて気持ちいいわけがない。
でも、不思議でね、そのサイコパスな男の12年間、人を殺していた時期、殺人鬼として過ごす12年間を丁寧に描いていて、その男の性格、生い立ち、その男がする行動なんかも丁寧にわかりやすく描いてくれちゃっているものだから、ああ、こんな人もいるんかな、なんかこれはこれで大変なんだなぁ、って思ってきちゃって、不思議なんだけど嫌じゃないんだよね、その男が。
その心の変化にマジヤベーなって思うのが面白くて、なんとなくだけど、わかった気にしてくれるのが心地よかったんだ、きっと、きっとな。
生きづらい人見てるとなんかホッとするっていうか安心するっていうか、なんかちょっとよ、そう思うのよ。
この男、殺人を犯すことでどんどん自分が解放されていき、大胆になっていって、殺人をやめられなくなる。
彼は殺人を犯してしまう、なぜ?と
本当は誰か止めて、誰かに見つけてもらいたいのだって思ってるところもちゃんと描いてる。
殺人は絶対しちゃダメなことだから、絶対に共感してはいけないんだけど、最後まで見届けてる自分は何なんだろうって思ったよ。
最後、やっぱり悪いことはしちゃいけませんよ、バーカ!殺人鬼は地獄行き!そうなるよね、バーカ!ってガハハ笑っているのに
その終わり方、本当はそうしたかったの?って思った。まぁ、どうなろうとどんな終わり方でもいいと思ったよ、それくらい貫いている作品だったもん。
この男、建築家になることが夢で、12年間、ずっと家を建てられずにいたんだよね、家の形で悩んで、家の材料何にしようで悩んで、ずっとずっと作れずにいた。
自分には何ができるんだろう?ってみんな思うことじゃない、生きてて何を残せるんだろう?って。
最後、この男は見つけるんだよね。やっと見つけることが出来たんだよね。
自分にしか出来ない、こと。
あのシーンは感動したなぁ…。
残虐なシーンばかりだし、こういうの好きっていうと気持ち悪がられる気がするし、オススメなんかしないけど、すごくいい映画だったよ。
映画、また大好きになれた作品。
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